WBCに挑む侍ジャパンのメンバー30人が決定した。連載「侍の宝刀」で、30人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる。

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NPB最高投手の称号をほしいままにするオリックス山本由伸投手(24)。毎回のように安定した結果を出せる「調整力」がずばぬけている。

「毎年続けていい成績を残すのはすごく難しいこと。波が少ない選手が本当にいい選手だと思う」と話したことがある。1試合だけ、1球だけに限れば、圧倒的なパフォーマンスを出せる投手もいる。だが山本は体調に異変さえなければ、かなりの確率で試合を支配する投球を見せる。史上初の2年連続4冠&沢村賞の実績が物語っている。

「フォームを再現するという意識ではないです。調子も毎回違うので、今回はこういう風にしたいなと思って、それに向けて(次の先発までの)1週間で作っていく感じです」。1つの型に固執するより、今の自分と相談して最善策を決めるイメージだろうか。

自分をよく知っているのだろう。ブルペンでの姿が印象的だ。捕手に球筋を確認し、1球ごとトラックマン(弾道測定器)の数値をチェック。スピードを中心に、すべての項目を見る。「自分が投げた感覚と、ボールを見た感じと、捕手の感想と、数値を照らし合わせて感覚が正しくなるようにしている」。感覚のズレが小さいのは、自分の体をコントロールできている証し。WBC球をしっかりと操れている理由もそこにあるのかもしれない。

今オフ、左足をほぼ上げない投法に変えたことが話題になっている。従来は足を上げ、1度止めてためを作り、そこから並進させていた。大きな変貌ぶりだったが、変えていく怖さは「全くない」と言い切る。「やっていることは昨年までと全く同じ。だから新フォームと言われると、それは違うなと思います」と平然。単発の取り組みではなく、何年もかけて進めてきたフォーム作りの同一線上にあることを強調した。

中嶋監督も「根本的なもの、やっていること自体は変わっていないと思う」と理解を示している。足を上げた場合とは重心移動のタイミングが変わるが、同量以上のエネルギーを生み出せているようだ。今のテーマである伸びのある直球にもいい効果が出てきた。

もちろん、体を自在に操るには高いレベルの肉体的な要素が必要になる。精神的な安定も調子の波を抑えられる一要素になる。WBCではエース格の役割を期待される。厳しいマウンドでも、ちょっとやそっとでは乱れない土台を24歳は築いている。【柏原誠】

山本由伸の主な国際大会の成績
山本由伸の主な国際大会の成績