WBCに挑む侍ジャパンのメンバー30人が決定した。連載「侍の宝刀」で、30人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる。

4日、中日戦で力投する侍ジャパン佐々木
4日、中日戦で力投する侍ジャパン佐々木

165キロのストレート。ロッテ佐々木朗希投手(21)が、数々の100マイル超え投手を見てきたダルビッシュ、大谷ら日本人メジャーリーガーをも驚かせた。

4日の中日戦の初回。半信半疑だったWBC使用球への順応だったが、不安を消し去った。直球36球。160キロ台は28球。平均球速は昨年5月20日ソフトバンク戦の161・1キロと並び過去最速だった。165キロをマークした初回の17球に限れば、161・5キロだ。もし、抑えやワンポイントでの起用でマウンドに立ったらどうなるのだろう…。

2月中旬の石垣島では、WBCに向けたストレートへの思いを言葉にした。「真っすぐは、やっぱりみんな共通で大事な球だと思う。真っすぐだけがという思いはないですけど、それが良くなれば変化球も生きますし、真っすぐがなきゃ。しっかりしなきゃという思いはあります」。三振量産のフォーク、侍ジャパン投手コーチを兼務するロッテ吉井監督やダルビッシュから助言をもらってきたスライダーもレベルアップはしている。だが「宝刀」はストレートで間違いない。

強い直球を投げられるようになった過程は、体の成長とケガが隣り合わせだった。高校時代は負荷をかけすぎると体に異常をきたすことも多かった。プロ入り後は体づくりに専念すると同時に、自分に適したトレーニングやストレッチ、ケア方法などを模索、実行。1歩1歩登ってきたからこそ今がある。プロ4年目を迎え、成果は得つつある。

165キロの翌日、ロッテ黒木投手コーチは「体の強さがあるからあれだけの球速が出せる。でも、まだまだ100%じゃないでしょ。大谷と朗希はまったく別物ですけど、いずれにしても異次元ですよ。朗希はもっともっと良くなります」。質を含め、さらなる最速更新も予感していた。

高校卒業後、身長は2センチ伸び、体重も約6キロ増えた。あくまで個人的な印象だが、当時、細身で華麗で力感なく160キロを出す投球フォームを「ツルのよう」と表現してきたが、今季のキャンプでキャッチボールを後ろ側から見て「キングコブラ」と改めたい。張りのある太ももを高く上げ、左足を踏み出す姿は、打者に襲いかかるかのような迫力。体は太くなくても、力強い威嚇にさえ感じた。

準決勝、決勝が行われる米国では、10年9月にレッズのチャプマンの170・3キロが世界最速。昨年5月には米テネシー大のジョイス投手が169・8キロという大学記録も出した。世界にはまだまだ上がいる。

11日のチェコ戦が佐々木の本格世界デビューとなる。WBCでの自身の投球で注目すべき点について「何でもいいですけど、三振ってことにしといてください」と笑ったこともある。いよいよ、宝刀を抜く。【鎌田直秀】(この項おわり)

佐々木朗の22年11月強化試合成績
佐々木朗の22年11月強化試合成績