侍ジャパンが世界一を目指す上で、準々決勝以降は下位打線の走力に注目したいですね。打線は1次ラウンド4試合で計38得点。ただ、今後は相手投手のレベルも格段にアップするでしょうし、特に準決勝以降を見すえた場合、優勝をもくろむ強豪国から簡単に大量点を奪えるとは思えません。どれだけ足を絡めて1点1点を積み重ねられるか。中でも中野選手、山田選手らの足が勝敗のカギを握りそうな気がします。

野手陣は4試合で計7盗塁。3戦目のチェコ戦では効果的な走塁が目立ちました。山田選手、大谷選手、中野選手で計3盗塁。三盗を決めた大谷選手が犠飛で生還したり、中野選手が四球と二盗から適時打で生還したり、走力を着実に得点につなげていた印象です。1次ラウンドでは猛打爆発の陰に隠れた感もありますが、今後は走力がクローズアップされる場面も増えるのではないでしょうか。

負傷者に目を向ければ、球界屈指の守備力を誇る遊撃源田選手の右手小指骨折は間違いなく痛い。とはいえ、代役先発が続く中野選手も源田選手に勝るとも劣らない走力の持ち主。彼の足を生かさない手はありません。チェコ戦と4戦目オーストラリア戦の二遊間スタメンはともに山田選手と中野選手の俊足コンビ。もし2人が下位打線で足を絡められれば、接戦をモノにできる確率は上がるはずです。

準々決勝以降は相手バッテリーの質も上がります。何もやみくもに「走れ」と言いたいわけではありません。ただ、仮に山田選手や中野選手が塁上にいれば、後ろの打者が内野ゴロや外野フライで凡退する間に進塁できているケースも増えるでしょう。少ない安打でどれだけ好機を作れるかをイメージした時、山田選手や中野選手の「進塁力」が非常に大きな武器になる、という考え方です。

現状、上位打線は1番ヌートバー選手、2番近藤選手、3番大谷選手が軒並み絶好調。5番吉田選手はもちろん、まだ調子を上げられていない4番村上選手にしても、簡単に犠飛を打ち上げられる能力は持っています。なかなか打ち崩せない相手でも、四球→二盗→進塁打→犠飛で1点をもぎ取れる精鋭たち。準々決勝以降はたとえ猛攻が鳴りを潜める展開になったとしても、緻密な野球で勝利を奪い取ってほしいものです。

ここからは負ければ終戦。1戦1戦プレッシャーが重くなり、誰がヒーローになってもおかしくない試合が続きます。13年WBCの井端さんや自分もそうだったかもしれませんが、当初は脇役と見られていた選手たちが日の目を浴びると、チームは一気に盛り上がるものです。そういった意味でも、山田選手や中野選手の持ち味には期待しています。(日刊スポーツ評論家)

23年3月11日、日本対チェコ 3回裏日本2死一塁、二盗を決める山田哲人
23年3月11日、日本対チェコ 3回裏日本2死一塁、二盗を決める山田哲人