カメラマンがファインダー越しに心を揺さぶられた場面を撮影した珠玉の1枚で、野球界のこの1年を振り返る新企画「写真の力」。全6回の第5回です。

■カメラマン・浅見桂子

日本中が喜んだ。

その日オープン戦を控えた選手たちも、もちろんだろう。そしてヤクルトのマスコット、つば九郎も。

3月22日、神宮球場でのヤクルト-DeNAのオープン戦。午前中、開門前のウオームアップ時には、米国で行われているWBC決勝戦の映像が短時間流された。しかし、練習が始まって映像は変わり、スマホなどでライブや速報を確認するしかなくなった。

 
 

取材中もそわそわ。いよいよ優勝が決まると、どこからともなく歓声が上がり、カメラマン席も携帯画面にくぎ付けに。そこにふっと、つば九郎。画面に映る村上宗隆内野手(23)のインタビューをのぞき込んで、羽をパタパタさせた。ささやかな風景だが、こういう皆の思いが野球を支えているのかも、と思った一場面でした。


■カメラマン・黒川智章

6月25日、北海道栗山町で撮影。侍ジャパン栗山英樹前監督(62)は、住んでいる栗山町でのWBC優勝パレードで、町民から監督の座右の銘でもある「夢は正夢」と書かれた限定長靴を贈られた。世界一を目指す重圧から解放され、地元町民から声援を受けた栗山前監督のおどけたしぐさ、笑顔が子どものようで、撮影していて、こちらまで楽しくなってきた。

 
 

前日本ハム監督でもあり、こんなに地元の人たちと密着し、愛された監督はいないのではないか。パレードには町の人口1万1000人を超える1万4000人が訪れた。北海道にある小さな町が沸騰した1日だった。