子どもの頃は誰でもニックネームというか、友人たちからよく分からない呼ばれ方をすることがある。小学生などはちょっとしたことですぐ妙な呼び名を付けるもの。授業などで名前などに関係することが出てきたら、もう大変。必要以上に盛り上がった記憶のある向きも多いだろう。

せんえつながら? 自分のことを書けば、例えば社会の時間に「○○高原(こうげん)」と出てきたら「コーゲンや!」と笑われた。大人になれば何が面白い、と思うのだが、そこが子どもである。

3日、大阪市内で阪神の入団会見に臨んだドラフト1位・近本にもそれがあった。「近本」姓はありそうでなさそうな名字だ。その「ちかもと」という名前に似たフレーズは昔の授業では必ず出てきた。

「水・金・地・火・木・土・天・海・冥」

すいきんちかもくどってんかいめい、と呼んだ。太陽系惑星の並び順。最近では最後の冥王星(めいおうせい)は惑星とは見なされないようになり「海王星」の「海」で終わるそう。

近本がドラフト1位指名されたとき、知人と話していて「近本選手は『すいきん・ちかもと』とか言われていたはず」という話題になった。

そしてこの日。近本に「つまらないことだけど…」と聞いてみた。はたして、こういう答えだった。

「それ、結構、言われてましたね~。子どものときは。さすがに何と返していいか分からず笑ってましたけど」

やはりそうか。「すいきん・ちかもと」だ。だが、これには意外な話がある。ひょっとして虎党は知らないかもしれないが、来季、リーグ4連覇を目指す広島のキャッチフレーズがすでに発表されている。それはこういうものだ。

「水金地火木ドッテンカープ」

先月23日のファン感謝デーで広島の選手会長・会沢が「太陽系で一番輝くチームを目指します」と発表した。

まさにそのまま。これはどうしたことか。近本に「広島のそれを知っている?」と聞いてみた。

「えっ? そうなんですか? 申し訳ないですけど知らなかったです…」

率直に答えた近本。そして力強く言い切った。

「じゃあ、ボクは『すいきん近本、ドッカン!』といきたいですね!」

ファンにアピールすることを重要視する新監督・矢野燿大の下、ドラ1ルーキーは、まずライバル球団のキャッチフレーズと勝負することになった。行け! 近本!【編集委員・高原寿夫】(敬称略)