センターフライを好捕する選手時代の赤星憲広氏(2002年4月10日撮影)
センターフライを好捕する選手時代の赤星憲広氏(2002年4月10日撮影)

「ポスト赤星」は至難の業!? 阪神ドラフト1位の近本光司(24=大阪ガス)のあこがれは、かつての猛虎戦士・赤星憲広だ。小柄ながらスピード、中堅の守備で2度のリーグ優勝に貢献した。近本がその姿に近づくのは虎党の願いでもあるが、簡単にはマネできない“特別な要素”がある。木曜のオフ企画「こんなん知ってますか!?」の新年第1弾は、レッドスターの意外な? すごさ、です。

丸佳浩が広島から巨人へFA移籍し、人的補償で広島が長野久義を獲得したのは野球ファンを驚かせた。長野をどう起用するかは広島監督・緒方孝市の腕の見せどころだが、当然、丸の抜けた中堅でスタメン出場の可能性は高い。まるで中堅手同士のトレードのような形になって、それはそれで面白い。

その中堅手、言うまでもなく外野の中心だ。捕手から二遊間、そして中堅をセンターラインと呼び、守備の要なのは今更言うまでもない。そして矢野燿大が指揮を執る新生阪神では、ドラフト1位の近本がレギュラー中堅手の位置を期待されているようだ。

その近本があこがれを隠さないのは、かつての阪神の名中堅手・赤星だ。現在は野球解説にとどまらないテレビ出演、スポーツニッポンの評論家としてメディアを中心に活躍中。あの星野阪神時代を始め、阪神のセンターといえば赤星というイメージは強い。

この中堅に関する赤星、球界でも異例の事実がある。赤星は中堅以外の守備についたことがないということだ。阪神ひと筋、9年のシーズンで通算1127試合に出場。そのうち1118試合(スタメン1083試合)で中堅守備についている。他の8ポジションはまったく経験がない。

投手、捕手に比べるまでもなく外野手は比較的、動かしやすいポジションだ。オリックス時代のイチローも「レーザービーム」で知られる右翼だけでなく中堅、左翼も守った。

過去の名選手を見ても、サードの代名詞・長嶋茂雄でも遊撃を18試合、外野を1試合守っている。一塁手しか浮かばない王貞治も外野で2試合出ている。さらに掛布雅之も遊撃を30試合、一塁手を8試合守っている。

そこから考えれば外野手で新人から引退まで中堅しか守らないというのは、きわめてめずらしい。もちろん赤星もこのことは意識していた。

赤星 それは結構、めずらしいと思いますね。自分もそこにプライドというか、こだわりは持っていました。正直に言って自分が出場している試合で他の人がセンターを守ることはいやでしたし、考えられなかったですね。

近代野球では野手は1人2ポジション以上を守ることが要求される場合が多い。猛虎の新指揮官・矢野も「いろいろなところを守ってくれる方がこちらとしてはありがたい」と率直に話す。そう考えれば近本があこがれの赤星のように「センターだけの野球人生」を目指すのは至難の業と言える。もちろん、その前に1軍戦力になることが重要なのだが…。(敬称略)【編集委員・高原寿夫】

キャッチボールをして汗を流す阪神近本(2019年1月7日撮影)
キャッチボールをして汗を流す阪神近本(2019年1月7日撮影)