メル・ロハス・ジュニア外野手(30)が阪神に来るのでは、という話が最初に報道されたとき、写真だけ見て「左打ちやん。ボーアを戦力外にしたのに」と思ってしまいました。記事を読めば、すぐにスイッチヒッターであることが分かるのに、やはり油断はいけません。

両打ちの外国人打者と言えば思い出すのはフェルナンド・セギノール選手です。セギノールは02年のオリックス・ブルーウェーブを皮切りに日本では日本ハム、楽天、そして合併球団オリックス・バファローズでもプレーしました。日本ハムで06年の日本一に貢献したことは有名ですが、こちらがよく取材させてもらったのは1年目の02年です。

当時、オリックスの監督はスパルタで知られた石毛宏典氏でした。石毛監督が激しい指導をしている横で、こちらに視線を送って肩をすくめ「理解できない」という様子を見せるなどの一面もありましたが5月には「2試合連続両打席本塁打」という離れ業を見せるなど、いい選手でした。

思わず笑わされた記憶もあります。当時、関東遠征である在京テレビ局の女性ディレクター(なかなかの美女)と雑談していたときのこと。話が終わった後、セギノールの方から「あの女性は誰だ?」と聞いてきたのです。

フツーの男性として美人に興味を持ったのでしょう。そこで「オレの彼女だけど。どうした?」とジョークを飛ばしました。するとジッとこちらを見ながら人さし指を左右に振って「チッチッチ。そんなはずない」。つたない英語しか使えないこちらに冗談の返しもなかなか芯を食っていました。その後、食事に行くなど話をするようになったものです。

今、あらためて振り返ると日本で成績を残す外国人選手に共通するものをセギノールは持っていたのかな、という気もします。

まず、いい意味で自分のペースを持っていることです。もちろん実力に裏打ちされたものであるのは当然として。そして周囲の状況を理解するクレバーさ。さらに記者という、直接、プレーに関係のないような存在とも交流しようとする柔軟さが新たな環境になじもうというメンタルを示していたのでは、と思います。

1年限りで阪神を去ったボーアもナイスガイでした。高年俸の問題もあってのことでしょうが寂しい気もします。さあロハス・ジュニアはどうでしょう。セギノールを思い出しつつ、今から期待を寄せています。【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「高原のねごと」)

06年10月26日、日本シリーズ第5戦で逆転の2点本塁打を放ったセギノールは笑顔で新庄(手前)と抱き合う
06年10月26日、日本シリーズ第5戦で逆転の2点本塁打を放ったセギノールは笑顔で新庄(手前)と抱き合う