初めて外国人選手を生取材した相手、それがハル・ブリーデンだった。「赤鬼」の異名をとったこの選手、本当にデカくて圧倒された。この名前を聞いて「おーん」と反応するのは古いファンだろう。

懐かしい名前が続く。マイク・ラインバックもいい選手だった。ガッツの塊のような男で、ごり押しで巨人に入った江川から放ったホームランは鮮烈だった。

阪神外国人の変遷…。来ては去り、去ってはまた来るの繰り返しで、ほとんどが補強失敗の歴史だった。トラ番として数多くの外国人を取材してきたが、優良と呼べるのはわずか。先のブリーデン、ラインバック以降、キーオ、フィルダー、オマリー、マートン、ゴメス、ウィリアムスなど数えるくらいしか活躍していない。

そんな中、新監督の岡田彰布は外国人選手と深く関わってきた。現役時代、チームに早く溶け込まそうとバースやパリッシュの面倒をみた。英語が話せる妻の陽子も手伝った。

コーチになった2003年にはこんな話が残っている。このシーズン、リーグ優勝するのだが外国人はアリアス。夏場、アリアスは調子を落とした。遠征先のホテルで彼は岡田の部屋を訪ねた。「バッティングを見てほしい」と頼んできた。打撃コーチは田淵。教えれば越権になる。ヘッドコーチの島野に連絡したら「教えてやってくれ。打撃コーチにはオレから報告しておくから」となった。

夜の打撃教室。アリアスは感激していた。後日、彼から聞いた。「オカダさんの打撃理論のすばらしさをチームメートに聞いていた。だからオレもすがった」。

2005年、監督2年目に入る時、岡田はタイロン・ウッズ獲りに動いた。長距離砲が必要でウッズが格好のターゲットだった。しかし獲得はマネーゲームになり、手を引いた。新たに獲得したのがアンディ・シーツ。長距離砲ではなかったが、とにかく守備がうまかった。ウッズからシーツへのシフトは見事なほどハマった。3番シーツはリーグ優勝に貢献した。

これくらいだろうか。外国人選手が当たった記憶は岡田にもほとんどない。新外国人が来るたびに失敗を繰り返した。キンケード、スペンサーなどは鳴り物入りだったが、これらの評価はアテにできないことがわかった。

阪神球団の外国人補強は悪手ばかりで、携わる渉外担当の能力が問われた。その象徴が今シーズンではなかったか。大金を投じて7人も8人も補強したが、まったく実らず、チェンやロドリゲスはまったく目立たぬまま日本を去った。

ここ数日で一気に来季の外国人選手の獲得が表面化した。野手2人に投手が2人。今季から残ったケラーを含め、これで5人が決定的となった。はてさて大きな期待を寄せてもいいものなのか。岡田は過去の経験から、トーンは低い。ここには岡田の「マイナス論理」が働いている。大きな期待を寄せるより、ダメ元くらいで考える方がちょうどいい。当たればもうけもの。外国人に対しての見方は、これくらいでいい。

表向きクリーンアップを…となるが、本音は違う。大山、佐藤輝にルーキー森下、または井上でクリーンアップを、が岡田の描く理想なのだ。外国人はあくまで「サブ的」人材。外国人選手を軸にすることは頭にない。好例がヤクルトである。

評論家として今年、見てきた中でヤクルトの優勝の要因を村上の超人的働きを第一に挙げ、続けて外国人選手の存在に着目していた。「サンタナ、オスナの2人よ。派手ではないし打線で下位を打つけど、ドンピシャの働きをしていたやんか。あの2人がいなければ…という感じやし、ああいう形がいいと思うよな」。

岡田が2023年シーズンに描くヤクルト型打線。新外国人が6番か7番を打つ打線になれば、攻撃力は間違いなく上がる。まずは外国人より現有の日本人選手を軸にして構成する。あくまで外国人はサブ。外国人選手への依存度が低くなればなるほど、チーム力は上がっているということなのだ。(敬称略)【内匠宏幸】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「かわいさ余って」)

ハル・ブリーデン(1976年撮影)
ハル・ブリーデン(1976年撮影)
阪神岡田彰布監督(2022年11月19日撮影)
阪神岡田彰布監督(2022年11月19日撮影)