4月2日、阪神ファンは目撃した。そして、それを「岡田マジック」と呼んだ。
京セラドーム大阪で行われたDeNA戦。ここを勝てば開幕3連勝になるところで、ポイントの瞬間は訪れた。2点差に迫られた8回裏2死一塁。打席には島田が入っていた。ここで走者中野が盗塁に成功した。これもサインだった。場面が変わってチャンスが広がった。
ここで岡田がベンチから出た。そして球審に告げた。「代打原口」。どよめくスタンド。相手は左腕エスコバー。すると1球目(エスコバーは2球目)を原口は振り抜いた。レフトへの2ラン。これで勝負を決めた。これこそ岡田のひらめき。勝負勘はさえわたった。
「エッ、そんなん、普通のことやんか」。こう振り返るのも岡田らしいものだった。素直に「ハマったよな」と自画自賛すればいいのに…と思うけど、岡田は決して、そんな表現はしない。岡田にすれば「普通」の采配。別段、たいしたことがないのである。
3連勝を決め、広島への移動。4月4日の広島戦。試合は終盤にもつれた。8回に1点を失って同点にされた。迎えた9回表。2死から中野が出た。ここで打席には守備から入っていた島田となった。逃げ切りへノイジーを下げていた。そこで同点にされたのは想定外だったが、今回はどうする、どうする岡田! ベンチには原口がいる。島田に代えて、代打原口でいくのか。2日前のことが浮かんだが、岡田はそのまま島田を打席に送った。
すでに岡田の頭は延長を想定していた。原口は先に出番がくる。まずは島田で仕掛ける。そしてエンドランを仕掛けた。島田は右方向にゴロを転がした。アウトになったが、中野を二塁に進めた。このあとのことは皆さん、ご存じのこと。大山の決勝タイムリー。やはり、この場面を作った島田がポイントになった。
あの局面、バントでもよかったが、逆に重圧がかかることも考慮し、エンドランでバットを出させることを決めた。ベンチの意図、狙いを、その先にいた島田は忠実に理解した。それがあのバッティングなのだ。
岡田はうれしかったに違いない。意義深い1打席に静かに手をたたいていた。「人それぞれ、チームの中での役割があるやんか。大きいのを打てない選手にホームランを打てなんて無理。その逆もある。とにかく特徴を生かすことよ。それがいわゆる存在感というものやと思うよ」。ずっとこんなことを言っていた。今回の開幕4連勝は、それぞれが存在感を発揮した結果だった。島田のセカンドゴロがその象徴、と感じた。
昔、岡田の1次政権の時、打席に立った若い選手に「三振してこい」と送り出した。他の選手の記録がかかっていたため、あえて得点を狙わなくていい、と三振指令を出した。その通りに三振で終わり、無事、狙い通りに完結したあと、岡田は試合後、査定担当の球団職員を呼び、三振した選手にプラス査定するように伝えていた。
意味あるアウトがある。これを岡田は重要視する。当然、今回の島田の1アウトは評価対象になる。プラス査定になる。こういうことも含め、チーム力が上がる。みんながひとつのアウトを深掘りする。こうなってくると、役割が明確になるし、やりがいがさらにふくらむ。
とにかく抜群のスタートを切った。3番ノイジー、6番森下が出色のデキにあり、大山、佐藤輝も持ち味を出している。こんな先発メンバーと同様にベンチで控えるサブメンバーも目の色をかえている。代打、代走、守備固め。繰り出す手がすべてタイムリーに的中する恐ろしさ。それでも「普通やんか」と岡田はケロっとしている。
先を読む力というのか、岡田は次の次の次まで考えを巡らせている。これで点が入る。そしたら次はこうする。継投はこれでいく。試合開始から岡田は頭に描いて、勝つ野球を模索する。だから、いつまでもこの状態が続くとは考えていない。いずれくる谷の状態を見越して、危機管理を研ぎ澄ませる。電話の声は決して浮かれてはいない。(敬称略)【内匠宏幸】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「岡田の野球よ」)











