2回にいきなり6失点。相手投手は実力派の涌井。普通なら負けます。でも今シーズンの阪神には「3連敗しない」強みがある。それにすがってみたら、なんと9回にサヨナラ勝ち。これは大きい。この勝ちは大きい。

5月3日の中日戦(甲子園)。底力を示したタイガースだが、最近、僕は二塁手中野のプレーにときめいている。2日のゲームであった超の字がつく守備が素晴らしい。ファインプレーもあるが、本当に堅実な守りが光っている。ここまで失策が0(3日時点)。それも攻めの守りでの0というのがいい。

二塁にコンバートした岡田彰布は大満足だろう。自分もライトから二塁に代わって成功した実例を持つ。決して簡単ではないはずだが、中野は難なくこなし、想像を超える結果を残している。

まだ開幕して1カ月が過ぎたところ。少々気は早いけど、中野はこれまでのセ界のセカンド伝説を打ち破るのでは…と胸を躍らせている。

岡田も1985年、コンバート初年度にダイヤモンドグラブ賞(1986年からはゴールデングラブ賞)に輝いている。当時のセ・リーグの二塁手は名手がゴロゴロいた。巨人篠塚、大洋高木豊、広島正田、中日上川。その中で得た勲章に「自信になった」と振り返っている。

そういった勢力分布は近年、1人の名手によって大きく変わった。それが広島の菊池の存在。とにかくうまい。堅実であり、超人的な守りもあり、セの二塁手は菊池と、強いイメージが定着。この牙城はなかなか崩せるものではなかった。

しかし2023年シーズン、様相は一変する。コンバートされたばかりの中野が堂々と菊池に挑戦状をたたきつけ、現状は大きく差をつけるところにいる。他のチームの二塁手は出遅れている状況でDeNAの牧、ヤクルト山田も目立たない。中野が大きくリードして前半を戦っている。

阪神の二塁手でゴールデングラブ賞に輝いたのは最近では2011年までさかのぼる。守備範囲の広かった平野恵一だ。彼は2010年にも受賞しているが、その前になると2003年の今岡誠。さらにその前になると1992年から3年連続の和田豊で、それ以前が1985年の岡田。そういう系譜がある。

さらに狙ってほしいのがベストナイン賞。守備だけでなく打撃でもリーグNO・1の二塁手として認められるわけで、中野は十分に狙えるプレーヤーに成長している。

こうなれば、さらなる望みがでてきて、守備を重視する岡田の下、二遊間のゴールデングラブのダブル獲りはどうか。そう遊撃の木浪の充実ぶりはどうだ。3日のゲームでサヨナラ打を放ったが、バッティングの状態のよさは、守りにも影響している。開幕直後はベンチスタートだったが、チャンスをモノにしてから打って守って、有数の8番打者でチームを支えている。

岡田が今シーズンの勝負手として送り出した新二遊間。当たり前のプレーを望んでスタートしたが、中野-木浪のコンビは確実に併殺プレーを完成させ、確実にアウトに取る堅実さも身についている。それが二遊間の失策がないという想定以上の好結果になっている。まだ前半戦といえども、失策がないというのは、前年のことを思えば驚異的な出来事といえる。それも守りに入るディフェンスではなく、攻撃的な守りの中でのミスなし。これが素晴らしい。

二遊間がゴールデングラブ賞に輝いたのは1985年の岡田-平田勝男。そこから時を経て2011年の平野-鳥谷敬となる。あれから12年、今年は久々にリーグ1の二遊間誕生の予感がする。

とにもかくにもセンターラインが強いチームは強固だ。現在、貯金を作る阪神を支えているのは打っても守っても、この二遊間である。このままシーズンを乗り切ることは簡単ではないが、乱れなく進めば、タイガースはそうは崩れない。そう思える2人の充実ぶりである。【内匠宏幸】(敬称略)