ドラフト会議の当日だった10月26日付のスポーツ新聞。各紙が阪神の1位指名候補を予想していたが、ページをめくってみると、新しい「ニュース」が報じられていた。

阪神の新コーチとして上本博紀の入閣が発表となっていた。来季、1軍か2軍か、また担当分野もまだ決まっていないとのこと。チームは28日から日本シリーズに向かう中、2024年シーズンへ、前に進みだしたということになる。

「岡田監督から一緒にユニホームを着て、一緒にがんばろう、と伝えてもらった」。上本はそう明かした。2008年のドラフト3位で、入団は2009年から。ということは岡田彰布との接点はない。2008年に監督を退いた。その直後に入団。ただ2人は早稲田大の先輩後輩。岡田は上本のことを気にかけていた。

昨年、監督カムバックが内定した頃、コーチ陣の編成について聞いた時に、確か上本の名前は出ていた。でも「ほかに仕事があって、どうも(コーチ就任は)無理のようや」と語っていたと記憶している。

タイガース絡みの職についており、すぐには岡田体制に参加できないという事情があり、ようやく今回、クリアされて岡田の要請に応えることになった。

今後、コーチの顔ぶれが変わるかどうか。それはまだわからないが、「OB」で固める形ができあがってきたのは間違いない。現状の1軍を見れば、生え抜きOBでないのは打撃コーチの水口、内野守備コーチの馬場、外野守備コーチの筒井。あとは生え抜きのOBで固めている。

昨年の暮れ、体調に不安があるという理由で、入閣を先延ばししていた今岡を口説き落とした。さらに2軍監督に迎えたのは和田。「いつまで背広を着てるんや」。いかにも岡田らしい口説き文句で現場に復帰させた。これらは岡田の思いがこめられた人事だった。「これから強い阪神を作る。そのために、コーチ陣にOBを呼ぶ。若い指導者を育てていくことも、オレの使命やから」。はっきりとこう口にしていた。

野村監督時代からか、スタッフ構成にOB重視の傾向が薄れていった。星野監督時代はそれが顕著だった。ヘッドコーチが島野、投手コーチが佐藤、西本。バッテリーコーチが達川とか、それは超重量級のスタッフだったが、正直、タイガース色は感じなかった。

そこから紆余(うよ)曲折を経て、第2次岡田内閣の発足となるのだが、岡田は裏で相当、動いたようだ。自分が監督を務めるのは、そう長くはない。2年契約でそのまま身を引くのか。2年連続優勝になって、続投を要請されても、あと1年…。それくらいのスパンで考えているようだ。

その間に何を作り出すのか。本社、球団が岡田に求めたのが後継候補を育てること。今岡のコーチ就任はその第1弾だったし、ちまたで聞かれる藤川球児、鳥谷敬も現場復帰させたい、という考えを岡田は持っている。

そんな中での上本のコーチ就任である。岡田と球団の方向性が一致している証しのニュースととらえてもいいだろう。

今年2月の沖縄キャンプで、岡田はOBの来訪を簡単に受け入れた。制限はない。「OBがドンドン来てくれて、グラウンドレベルに降りてきてもらって。OBにも協力してもらって、強い阪神を作っていかねば」。65歳監督のタイガース愛で、OBが集まる光景を沖縄でも甲子園でよく見かけることになった。

この先、日本一への挑戦が待っている。その裏側で、新たなコーチ人事に岡田が着手するのか。これは楽しみである。【内匠宏幸】(敬称略)