契約更改交渉を終え(まだ未更改者はいるが)、ハワイへのV旅行に。何もかもが景気のいい話ばかりのタイガース。ハワイに旅立つ直前、監督の岡田彰布はしみじみと語っていた。

「なあ、幸せなことやな。リーグ優勝して、日本一になったからのご褒美やんか。選手も年俸が上がって、最高のオフになったやろうし」と言いつつ、爆上がりした選手の年俸におどろきを隠せなかった。

「そら、すごいわ。ものすごく上がっているし、球団もたいしたもんやで」。そこで35年ほど前の現役時代を思い出していた。現役の時、岡田の年俸は1億を超えていたのか? 「それはない。1億円はいかなかった。最高年俸?」と振り返り、1987年がピークだったと明かした。

日本一を達成してから、一気の落ち込み。そんな中でも奮闘が評価され、年俸はアップ。「それでいくらになったと思う?」ときた。1億に近い額…と返すと「全然よ。8000万にもいかんかったわ。オレの最高は7600万よ」。そういう時代だった。1億は夢のまた夢。それが今は簡単に超えていく。近本は軽く3億円超え。「ホンマ、すごいよね」と岡田は実感を込めた。

選手の年俸が上がるのは監督として、うれしいこと。「監督の仕事のひとつは、選手の給料を上げること」と常々、公言している。その通りになったことが、うれしい。さらに感心しているのが、選手の言葉。それぞれに「言葉力」があることを評価していた。

「ここまで大幅に待遇がよくなれば、少しは浮ついて、いらんことまでしゃべってしまいそうやんか。それがウチの選手には見当たらない。落ち着いて、しっかり先を見てな。それがわかった」

岡田が例に挙げたのが近本、大山、中野、木浪、坂本といったところ。これらの選手は大幅アップを勝ち取った。交渉が終わり。トラ番の取材を受けた際、はしゃぐでもなく、喜びを表しながら、来季に向けての前向きな話に終始していた。それらをスポーツ新聞で読み、岡田はニヤリとする。

現役で最も充実する年齢を、岡田は「28歳から32歳あたり」とした。フィジカルもそう、技術もそう、メンタルもそう。このあたりの年齢の選手はすべてに充実している、というのが岡田の持論。それを裏付けるいまの阪神の選手構成…。「これだけでもわかるやろ。主力のほとんどが充実期を迎えた。動きだけでなく、言葉にもそれが表れている。まさしく心技体よ。だから…、この強さは簡単に崩れない」。岡田はオフにさらなる手ごたえを得た。

さらに成長を求めていた佐藤輝のさらなる変化も感じ取っている。今シーズン中、ヒーローインタビューで「最高でーす」を繰り返すことを見かね、「最高でーす」禁止を申し渡した。それ以降、佐藤輝の言動を注視していたが、大きな変化があったと認めた。「それはオフになってもな。年俸が大幅に上がったあとも、それで満足するようなコメントがなかった。来年はさらに…といった意欲というのかな。だんだん言葉に重みが出てきてるもんね」。

ハワイでは野球を忘れて楽しめ! 岡田指令によって、しばしの休息を取り、年が明ければ野球に没頭する。「そういう切り替えができるチームになった」。岡田はハワイで、また自信を膨らませている。【内匠宏幸】

 (敬称略)

出発セレモニーであいさつをする岡田監督(撮影・上田博志)
出発セレモニーであいさつをする岡田監督(撮影・上田博志)
岡田監督(中央)はV旅行の出発セレモニーであいさつをする。左は百北社長、右は中野(撮影・上田博志)
岡田監督(中央)はV旅行の出発セレモニーであいさつをする。左は百北社長、右は中野(撮影・上田博志)