阪神の内野守備コーチ、馬場敏史は岡田彰布から信頼を寄せられている。2人はオリックス時代に現役選手としてともに過ごしている。「馬場ちゃんは守り、うまかったよ。あんまり打たんかったけどな」。岡田の突っ込みに、馬場は笑う。
堅実な守備。それが馬場のプレースタイルだった。だからコーチになってから、選手に求めるのは基本。確実性のプレーである。「その点でいうと、ようやく上達してきたと思う」。少し前、佐藤輝の守備を問うとこう返した。ただひと言、付け加えた。「時々、出るんですよ。よくなったと思ったら、やるからね…」。
それが出た。大事な広島戦。8月9日には失点につながる送球ミスだった。2日後の3戦目も同じようなミス。「またか…」。そこに丁寧さはなかった。ひと言で表せば「雑」なプレーにしか映らなかった。
もちろん岡田は怒っていた。先制点を奪われ、敗戦の原因にもなったことで、試合後の記者会見はたった30秒。佐藤輝の守備を問われて、顔を赤くしていた。
投げている投手のリアクションが気になった。村上は打ち取ったと思った瞬間のエラーに「エッ」という顔つきになっていた。
8月11日の試合に先発した高橋遥は超久々のマウンドだった。それがうまくスタートを切った。4回も2死を取った。ところが次に三塁ゴロ。またしても佐藤輝の雑な送球が出て、出塁を許した。そこからヒット、四球で満塁となり、何とか三振でこのイニングを終えた。すんなりといっているところが、その後に11球投げるハメになった。
球数が大いに影響する登板だっただけに、このエラーは当然、ベンチワークにも波及したし、6回いけたところが5回で交代になったとも考えられた。
野球にミスはつきもの。そんなことは岡田も馬場も理解している。だからファインプレーなどは求めていない。「確実に。普通のプレーを」。それだけでいい。丁寧に打球をさばき、確実に送球する一連の流れを。それだけでいいのに、佐藤輝の守りには、残念ながら雑さが強く残るのだ。
ミスに対して怒りがわく。それでも岡田は佐藤輝を外すことはない。これがシーズンの序盤ならまだしも、勝負の時を迎えたいま、佐藤輝のバットなくしては成り立たない。4番を任せる。打率は急上昇した。これからの期待感は増すばかり。このアンバランスさが、佐藤輝…なのだろう。
これから先もミスは出るだろう。それをバットで取り返すこともあるだろう。でも、まずは致命的なミスは防ごう。失策の数が増えても、佐藤輝があえて見せる平気そうな表情…。この強がりをバットに乗せていくしかない。【内匠宏幸】(敬称略)







