<イースタンリーグ:日本ハム9-0DeNA>◇12日◇鎌ケ谷


捕手として現役21年間で通算出場試合1527。引退後はコーチとして4球団で計21年間(うち1年間は編成担当)、合わせて42年間をプロ野球で生きてきた田村藤夫氏(61)が、日本ハムの斎藤佑樹投手(33)の今季初登板を解説した。

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今季の対外試合では初登板となった。これまではシート打撃など味方に投げていたが、公式戦で相手チームに投げるとなると、またひとつ段階が上がる。

右肘を痛め、リハビリを経てのマウンドとなるが、斎藤もプロ11年目を数える。そこはフラットな目で復帰登板を見た。

6回の1イニングを投げ打者3人に9球を投げた。戸柱はカウント1-2からフォークが低めに決まり、泳いで右飛。嶺井はカウント2-0から内角ツーシームで三ゴロ。益子も1-0から同じ内角ツーシームで三ゴロ。結果は3者凡退だった。最後益子を打ち取った時、斎藤はグラブと右手を顔の前あたりでパチンと合わせた。見ていた私には、ほっとしたようなしぐさに思えた。

最速は132キロ。変化球はフォークとカット、ツーシームだった。

まず戸柱への初球は外角ストレートでストライク。2球目が低めのフォークがボール、3球目が内角ストレートで2ストライクとし、4球目が結果球となった。ここで初球の外角ストレートはある程度制球されていた。変化球でボールを挟み3球目の内角ストレートもいいコースに決まっていた。戸柱は変化球が頭にあって打ちに行かなかったのか、コースがいいところに決まったので手が出なかったのか分からないが、132キロという球速であっても、しっかり制球はされていた。

そして嶺井には2-0から、益子には1-0から、いずれもバッティングカウントで打ってくる場面。ゴロを打たせようという意図は感じられる内角ツーシームで、狙い通りに仕留めた。

久しぶりの実戦ということを考えれば、まあまあ良かったのではないか。9球で1イニングを投げ終わったので、もう少し投げるかと思ったがこの回で交代。そこから察すると、今は相手打者に投げることに重きを置いている状況だと感じる。

ここから、どこまでコンディションが上がるか。135キロまで球速が出るかは不透明だ。ボールのキレにしてもとりたてて良かったとは感じなかった。特に変化球をしっかり制球しようと意識しながら打者と対戦していた、という段階だ。

今後に向けて言うなら、緩急は全くなかったのが気になる。ゆるいボールがない。カーブがあるが、今日は投げていない。この日のピッチングでは、同じような球速の変化球を使っていた。ツーシーム、カット、そしてフォーク。左右と落ちるボールだ。

左右と下という要素に、緩急が加わると、打者はタイミングを合わせるため、いろんなボールを想定するから、攻略するのがやっかいになってくる。

今日の試合で言えば右打者の内角、左打者の外角へのツーシームはある程度良かったが、単体で勝負していくのではなく、タイミングをずらすためのカーブや、変化球を効果的に見せる工夫が必要になる。例えば、外角へのカットを勝負球に組み立てるなら、打者をのけぞらせる内角ストレートが必要になる。今日はそこまでのコンビネーションはなかった。

そしてこれがもっとも肝心だが、最速132キロの球威ならば、ストライク先行のピッチングが求められる。嶺井、益子にはいずれもボール先行になっていた。特に嶺井には2-0から苦し紛れにツーシームを投げていたようにも映った。結果は三ゴロだが、今の斎藤の力量なら2-0とカウントを悪くしたところで、相当苦しくなる。

どのボールでストライクを先行していくのか。そしてストレートは見せ球として組み立てていくしかない。変化球を続ける中で意表をつく意味でのストレートはあるだろうが、この日の球威、キレでは当然のことだが勝負球にはならない。

プロ11年目で肘痛を抱え、リハビリからの復帰登板となったが、復活とは言えない。斎藤の置かれた立場は非常に厳しい。この球威ならば、さらに際どく投げ分ける制球、緩急をつけるカーブ、そして勝負球にするならツーシームかフォークの精度をさらに上げるしかない。(日刊スポーツ評論家)

イースタン・リーグ 日本ハム対DeNA 6回表、269日ぶりに実戦登板した日本ハム斎藤
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