<イースタンリーグ:日本ハム2-10楽天>◇25日◇鎌ケ谷
プロ5年目、日本ハム吉田輝星投手(22=金足農)のピッチングにいよいよ吉田らしさが漂ってきた。この試合では、先発して2回を投げ、打者8人に被安打2、奪三振1、失点1。球数は32球だった。
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1軍を念頭に置き始めたのか、これが吉田流の段階を踏んだ調整法なのか。メリハリをつけたピッチングには、くっきりとした狙いが浮かんだ。
私が感じたポイントは、真っすぐ狙いの打者に真っすぐで挑み、どこまで球威で押し込めるか。1軍経験のある打者3人に、意図的にまっすぐで勝負した。
初回1死一、三塁。4番和田にはカウント1-0から外角高めの真っすぐ。和田はとらえたが右犠飛。2死一塁で5番銀次。0-1からほぼ真ん中の真っすぐで中飛。いずれも紙一重に感じた。続く2回、1死走者なし。ウレーニャに対し、1-0からほぼ真ん中の真っすぐで中飛だった。
この3打者に対する真っすぐは、どれも長打を浴びる可能性が高かった。和田へのボールは、バッティングカウントだったこともあり、私の目には危ないボールに見えた。しかし、結果を見ると、やや和田は差し込まれていた。吉田はこの打者の対応を確認したかったのだろうと感じた。
銀次に対しても、ほぼ真ん中の真っすぐで、バックスクリーンに運ばれても不思議ではなかった。ほんのわずかの差で外野フライになったという印象だ。
ウレーニャへのピッチングは初球スライダーがボールで、カウントもバッティングカウント。ウレーニャはストライクを取りくる2球目を狙っており、そこへ張っていたであろう真っすぐを投げ込む、という状況だった。言うなれば、100%真っすぐ待ちに、真っすぐ勝負。結果はわずかに差し込まれた中飛。
開幕2軍で迎えた吉田は、春先はフォーム固めに苦労してきた。ようやく、真っすぐに手応えを感じはじめ、フォーク、カットボールとのコンビネーションという形が見えつつある時期に入っている。
このタイミングで、現状の自分の真っすぐで、どこまで押せるか、確かめておきたかったのだろう。はたから見ると、ヒヤッとするボールだが、こういう場面で思い切って腕を振れるところもまた、吉田の魅力でもある。
これもひとつのバロメーターなのだろう。ピッチャーは、ボールが指先を離れたところからホームベース上までの軌道がはっきり分かる。同時に、打者のバットの軌道も見える。
打者は「もらった」と思ってバットを出す。ある程度芯で捉えながら、そこから先は球威との戦い。結果、外野フライになれば、投手の勝ちになる。
打ち損じという見方もあるが、芯で捉え切れなかった、ヒットにできなかったことを総じてミスショットになると認識している。
吉田の真っすぐは上り調子に入った、そういう段階に移行したのだろう。吉田の狙いを視野に入れつつ、きっちり解説したい。
私は最初、スタンドから見ていたが、スコアボードの球速表示が不調。初回が終わると、グラウンドレベルの部屋で他球団の編成と試合を見た。そこではトラックマンのデータもわかり、2回の最速は147キロだった。
目線がグラウンドレベルに近くなると、球筋も見やすくなる。私が重要視するベース板での強さは出ていた。しかし、今季これまで見たよりも力はあると感じただけで、打者を圧倒するほどの強さとは言えない。
現に、この試合では真っすぐで空振りが取れていない。ファウルされていた。このあたりは、まだ吉田としても会心の球質とは感じていないだろう。吉田は投げるほど球質が磨かれていくタイプ。ここを出発点として、真っすぐと分かっていても空振りが取れるまでに仕上げてもらいたい。
そうすれば、1軍で主力と対戦した時も、腹をくくって勝負できるようになる。
豊富な回転数で、きれいな軌道を描き、ベース板で最大の出力を発揮する。それが、吉田本来のまっすぐだろう。この日の真っすぐならば、1軍ではスタンドに運ばれる可能性は多分にある。
吉田が避けては通れない段階に、手をかけたと受けとめている。いちだん上のフェーズに入ったということだ。吉田の生命線は真っすぐ。この大黒柱を磨いてこそ、1軍で輝く道が見えてくる。(日刊スポーツ評論家)