大船渡・佐々木朗希の相手に向き合う強い姿勢は、対戦相手だけではない。取材する報道陣に対しても、真摯(しんし)に対応。質問には真ん丸で少し小さめな耳をしっかり傾ける。190センチの大きな体を少しだけ丸くかがめ、目線もしっかり合わせようとする。

時には真剣に聞くあまりに、視線が鋭くなることも。昨秋、1度だけ「目力すごいね」と指摘したことがある。「えっっ」と絶句したあと、少しだけつりあがった目尻を両手でさすりながら苦笑い。誰とでも実直に接する姿も、愛される理由の1つだ。

目だけでなく気持ちはもっと強い。特に負けることは大嫌い。全国的には無名だったが、高校入学後に同世代のNO・1を目指す目標物として、横浜の最速152キロ左腕・及川雅貴投手の画像を携帯の待ち受けにしていたこともある。

中学時代の運動会リレーでも、50メートル5秒9の自分が勝つだけでなく、仲間とどう走ったら勝てるかを相談して実践するほど。もちろん、今でも一塁までの全力疾走は欠かすことはない。「自分が塁に出てホームを踏んでも、自分が打っての1点でも、勝てればどっちもうれしいですから」。ベンチに下がれば三塁コーチも率先するのが佐々木朗希という男だ。【鎌田直秀】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)