西武森脇亮介投手(33)の耳にはもちろん、聞こえていた。ブルペンからマウンドへ歩く。左翼席から割れんばかりの拍手が。

「言葉にするのは難しいんですけど、なんというか、もう、とてもうれしかったですね」

マウンドでしゃがむ。ロジンをポンポンとさわる。360度をファンに囲まれた懐かしい舞台。3年前、右上腕動脈閉塞(へいそく)症という、時には脈さえ取れない生命にもかかわる大きな病に倒れ、復活し、1087日ぶりに1軍のマウンドに戻ってきた。

ただ感傷には浸れない。戦いの場だ。先発が早々に崩れ、1点リードされた6回に3番手として出番が回ってきた。

「想定内でしたけど、緊張しましたね。でも緊張とか言ってる場合じゃなくなって」

安打、右飛、安打、一邪飛、四球で2死満塁。打席には3番西川。ここでの失点はかなり痛い。ただ、ここからが経験値が高いベテランの真骨頂だ。

「逆にしっかり球数を放れて落ち着けた、というのはあったので。ピンチにはなりましたけど、そこからどれだけ粘れるかも大事にはなってくるので」

最後はカットボールを空振りさせると、球場が歓声とため息に。懐かしい感覚に包まれながら、森脇はグラブをポーンと叩く。

球場の誰もが夜空への打ち上げ花火を見上げる中、黙々とブルペンで準備し続けた。「電話でかかってきたら、いつでも行けるように」。そんな慌ただしい現場に、森脇亮介は帰ってきた。【金子真仁】