「NPBで審判をやりたい」。作新学院・黒鵜(くろう)太陽マネジャー(3年)は審判の魅力に心を奪われた。野球との出会いは小学生。投手として全力で野球に明け暮れる毎日を過ごした。そして、中学生になったある日、プロ野球を観戦した。そこで心を奪われたのが「審判」だった。「ジャッジのキレと、球場に響き渡る声に魅了されました」と心躍らせる。

作新学院は甲子園に複数回出場する名門校。「ここにいけば、野球も高いレベルでできる。もしだめでも、その中で審判ができたら自分の技術も上がっていく」と考え進学を志願。1年11月からマネジャーに転向。部員から「選手より、審判の方が生き生きしているよと言われます」と選択は間違っていなかった。

野球部の中に当時は部員が3人だった「審判部」を作った。「選手と同じで、人と競い合うことは大切」。練習試合では、自分の審判の動きを確認するビデオを持参するほど向上心が高い。そんな努力家を小針崇宏監督(36)は「唯一、対外試合で胸を張れる部員」と冗談交じりに称賛する。

自分の夢の前にやることがある。「高校野球を全力でやりきる」。大会ではスタンドから選手に声援を送ることになるが「選手も1戦必勝だが、応援も1戦必勝。審判で培った、キレのある声と声量で戦います」とあと1勝となった甲子園への切符に向け意気込んだ。【佐藤勝亮】

練習試合で審判をする作新学院・黒鵜(撮影・佐藤勝亮)
練習試合で審判をする作新学院・黒鵜(撮影・佐藤勝亮)