今夏の高校野球予選期間は奈良大会を取材することが多かった新人記者の私にとって、初めての夏で最も多く取材した高校は智弁学園だった。

甲子園で8強入りを果たした同校だが、順風満帆に勝ち上がったわけではない。奈良大会1回戦も苦しんだ。幸先よく序盤に4点を先制したが、5回に2点を返され、逃げ切ったが、まさに辛勝だった。

それでも奈良大会は準々決勝で天理を、決勝でプロ注目・岸本佑也内野手(3年)率いる奈良大付を倒し優勝。甲子園でも、2回戦では今春センバツ優勝校の健大高崎(群馬)、3回戦では大阪桐蔭に勝利した小松大谷(石川)を破り、準々決勝まで駒を進めた。

プロ注目の派手な選手がいるわけでもなく、今春は県大会の準々決勝で敗れていたチーム。それでも試合を重ねるごとに、ビハインドでも「負けないだろう」と思わせられた。

小坂将商(まさあき)監督(47)は奈良大会決勝後に「こんなに(チームが)まとまったのは初めて」と評価した。甲子園で敗退後も「最後まで元気あって、ひょっとしたら(逆転が)あるんじゃないかと思った」とたたえた。そんな今年のチームを引っ張った主将は、知花琉綺亜(るきあ)内野手(3年)だ。

知花は三重の社会人チームで約15年間プレーした父の影響で小学1年からにソフトボールチームに所属していた。父宏尚さん(49)が監督、母絵美さん(49)がスコアラーで、弟阿生琉さんも所属し、家族で全国8強の経験もある。小学生時代も知花は主将を務めた。

父も母も優しい表情で戦況を見つめ、試合途中にもかかわらず快く取材に応じてくれた。小坂監督も知花のことを「人柄が良いから、周りの人間がついてきて、周りの人間が助けて、最後まとまって甲子園まで来られたことが良かった」と語る。その人柄や引っ張る力は家族がルーツだとうががわせた。

それでも宏尚さんは「ここ半年くらいで、周りを見られるようになった」と聖地で躍動する姿を見て智弁学園での成長を実感していた。

知花は甲子園敗退後「日頃の行いが出る。当たり前のことを当たり前にすれば、結果もおのずとついてくることを智弁学園で学んだ」と明かした。「頼りないキャプテンだったが、誰1人文句を言わずについてきてくれて、本当に良い仲間」と感謝した。

「自分1人じゃなくて仲間も親も支えてくれた」。高校野球生活は「かけがえのない」「一生の宝物」と言う選手も多い。この期間に経験したことはもちろん、仲間や家族との絆も人生でずっと生かされるのだろうと感じた。【塚本光】

智弁学園対京都国際 スタンドから応援する智弁学園・知花琉綺亜主将の父宏尚さん(撮影・塚本光)
智弁学園対京都国際 スタンドから応援する智弁学園・知花琉綺亜主将の父宏尚さん(撮影・塚本光)