阪神対広島 オーダーを交換する矢野燿大監督と緒方孝市監督(撮影・上山淳一)
阪神対広島 オーダーを交換する矢野燿大監督と緒方孝市監督(撮影・上山淳一)

また、あんたか。そういう顔だ。同時に、仕方ないなという表情も見せる。どんな仕事でも長くやっていると、こういうところは少しだけ得なのかもしれない。広島の指揮官・緒方孝市に試合前、声を掛けた。

今週は阪神、広島ともに苦手にしていた巨人、ヤクルトに連勝し、甲子園での戦いを迎えた。開幕から苦労していた両軍だったが試合前までともに貯金3の2位。同じような成績だ。だが緒方の感じ方は違う。

「阪神は強いって言ってるじゃないですか。最初から。リリーフを含めて投手陣が一番、いいんだから。そこが落ち着いてきたらこうなりますよ。今年のウチは形をつくることからやっているから。まあ、この3連戦、1つはもらって帰りたいですけどね」

謙虚な話だった。だがこのセリフを額面通り、受け取るわけにはいかない。なにしろ相手は3連覇をしている広島だ。前監督・金本知憲が指揮を執っていた17年だったか、このコラムでこんな話を書いた。「ひょっとして金本は巡りの悪いときに大きな仕事を引き受けてしまったのでは…」。広島が黄金期に突入したタイミングでの監督就任ではないかという意味だ。

3連覇までするとは思わなかったが緒方率いる広島は強く、金本、あるいは巨人・高橋由伸といった他球団の指揮官たちがユニホームを脱いでいる。

広島3連覇の3年間、阪神と広島の成績はこうだ。阪神から見た数字である。

18年 10勝15敗

17年 10勝14敗1分け

16年 7勝18敗

負け越しの連続だ。阪神が16年から4位、2位、最下位という結果なので当然と言えば当然だが、やはり広島のカベは厚い。

中盤までは接戦だったが8回に逆転されると流れは広島にいった。ヘッドコーチの清水雅治は「守り負け」とした。4回裏、阪神は2死一、二塁から梅野隆太郎が右前打したが二塁走者・大山悠輔が本塁で刺された。逆に阪神は9回、福留孝介がきわどいタイミングだったが菊池涼介を刺せなかった。すでに雌雄は決していたが対照的なプレーだったということだろう。

とにかく1点差でも8点差でも負けは負け。これで今季の広島戦は4勝3敗になった。もちろん、まだ星勘定をする時期ではない。それでも広島を相手になんとか五分で戦っていかないと楽しみのある秋はやってこない。(敬称略)

阪神対広島 広島に逆転負けで厳しい顔であいさつに出てくる矢野耀大監督(撮影・清水貴仁)
阪神対広島 広島に逆転負けで厳しい顔であいさつに出てくる矢野耀大監督(撮影・清水貴仁)