4試合連続の1点差勝利か。大きかったのは8回裏、DeNA桑原将志の二塁オーバーランだろう。あれで流れが阪神に来た。桑原にしても懸命のプレーで不可抗力なのだが、やはりミスは痛いということだ。

阪神にもとんでもないミスが出ていた可能性があった。糸原健斗のサヨナラ安打で勝った前日23日のヤクルト12回戦。これが“幻のサヨナラ”になっていたおそれがあり、熱心な虎党の間でも話題になっている。

この試合は0-0の9回裏、1死満塁から糸原が右中間を破る安打を放ち、阪神がサヨナラ勝ちした。だがこのとき三塁走者・梅野隆太郎が生還するのを見届けた二塁走者・植田海が喜びのあまり、三塁ベースを踏まずに歓喜の輪に参加していた。

直後に福留孝介が植田を指さしながら指摘する場面がテレビ画面に映し出された。これについてこの日、福留に聞くと「何も言ってないよ」とはぐらかした。だが走塁についての指摘だったのは明白だ。

「そうですね。我々も分かっていたけれど、あの場面、ファンの前でコーチから指導するのは控えた。でも選手は分かるし、ああいうことになったようです」。一塁ベースコーチの筒井壮はそう説明した。

大ミスを未然に防ぐカギになったのは一塁走者・北條史也だった。あのケースで仮に北條も二塁ベースを踏まずに喜びの輪に参加していたとする。その場合、ヤクルト側が内野にボールを返して三塁、二塁でアウトにすれば右翼ゴロによる併殺となり、梅野の生還が認められていなかった可能性があった。

「あそこは筒井コーチから外野フライが上がっても一、二塁の走者はタッチアップを試みないこと、安打の場合はそれぞれが前のベースを踏むことを言われていた」。二塁を踏んだ北條は振り返った。これで植田がアウトになっていても阪神にとって最悪のケースは起こらなかった。

それでも油断としか言えないプレーであり、福留がベテランとしての立場から注意を喚起したようだ。

今季、指揮官・矢野燿大は明るいムードづくりのため意識して喜ぶ。それはいいのだが浮かれて手抜きのような動きはダメだ。そこから手にした勝利がこぼれてしまうこともある。相手ミスもあっての4連勝だろう。勝負の世界、それもありだが勝っているときこそ緊張感は重要だ。(敬称略)