いよいよ12球団キャンプイン。選手、関係者の見慣れた顔ぶれも不思議に新鮮な気がする。初日ということもあるけれど選手の動きも軽快だ。沖縄の太陽もやはり暖かい。球春到来。何度、経験してもいい感覚である。そんな中、指揮官・矢野燿大は“あの手この手”でチームを乗せていく方法を考えていた。

日刊スポーツをはじめ、2日付の各スポーツ紙には「初日のMVP」という記事が載っているはず。ややベタな企画だが、これは指揮官・矢野燿大の発案によるものだ。この朝、各紙の虎番キャップに「考えてみてよ」と相談した。矢野にその狙いを聞いた。

「MVPを決めようと思っていれば誰が一番目立っているか、とか意識するでしょ。会社によっても違うだろうし。記者の人たちのキャンプを見る目も変わるかもしれない。それによって書かれる選手の感じ方も違ってくるかもしれませんしね」。そんな話だった。

かつて「担当記者も戦力」と言い切ったのは闘将・星野仙一だ。03年の虎番キャップ時代に「でも批判も書きまっせ?」と言葉を返したりもしたが、それも含め、星野は必要なことだと思っていた。矢野の取り組みはそのにおいがして、なんだか懐かしい。

そんな矢野はこの日、うれしい訪問も受けた。昨年8月に行われた第33回全日本大学女子野球選手権大会で初の日本一に輝いた武庫川女大の主将だった村上更沙(4年)らが訪れたのだ。

監督就任前の18年冬に矢野が行ったトークショーに阪神ファンの村上らが参加。質問コーナーで同大学の女子野球部のチームスローガンについて相談したことが存在を知ってもらうキッカケになったという。

「訪れた」と書いたが一般のファンとして彼女たちが球場に来ていることを関係者に聞いた矢野が球場内に招待したのが実情だ。「先に日本一になってなあ。どうしたらいいか教えてや」。そう笑顔を浮かべながら招き入れた。

「日本一になるんやと言い続けたことがよかったです」。そう“勝利のコツ”を口にした村上らに矢野も「それやろ。オレと同じやないか」と喜んだという。

どうすれば今のチームを、選手をもり立てていけるか。新助っ人、期待の若手たちの練習に目を光らせながらも、矢野はいつも考えている。日本一になる。決まっている。そう繰り返す矢野の2年目が始まった。(敬称略)