いいねえ。貯金1ではないか。「何? まだ借金2やないか。阪神は。何を言うとるんや!」。うっかりこんなことを書けば、そう、しかられそうだ。でもその話ではない。青柳晃洋だ。この日7回1失点の好投で3勝目をマークした。

プロ5年目の青柳はこれで通算成績が21勝20敗となった。キャリアハイの9勝を上げた昨季も9敗しており、過去4年で貯金をつくったシーズンはまだない。しかし、ここまでの調子を見れば、今季こそ貯金、それもしっかりとため込めるかも…と期待する。

それにしてもユニークな投手だ。独特な投げ方を含めて外見もなかなか個性的。虎番記者の記事にもあるようにゴロ量産の投球もそうなのだが、5回に投ゴロをワンバウンドで一塁に送球するなどフィールディングがあやしいのも面白い。これで結果がついてくれば、優等生が多いチームにあってはなかなかのスター候補ではないか。

入団時から制球難が課題だった青柳は当然のように死球も多かった。17年6月30日ヤクルト戦では「1イニング3死球」の不名誉な? プロ野球タイ記録も持っている。しかし、それを何とも思っていないところが面白い。その年の暮れ、イベントを取材したときにこんな話をしていた。

「死球が多いのは知ってますけど、別に打者を狙って投げて、当てているわけではありませんし、気にしていません。コースを狙って攻めていった結果なので。ビビッて自分のボールを投げられない方がダメだと思います」

ひょうひょうと、しかし強気に言い切る姿勢に、繰り返すが真面目な選手が多い阪神にはめずらしいタイプになるかも、と思った。それ以来、ひそかに注目しているのだが着実に成長し、今季は西勇輝同様、あるいはそれ以上に安定感のある投球を続けているのは頼もしい限りだ。

青柳の好投もあって阪神は少しずつ波に乗ってきた。これで借金2。なんとかの皮算用で申し訳ないが、中日に3連勝できれば19日には一気に勝率5割に復帰する計算だ。

19日は開幕してちょうど1カ月になる。開幕から12試合で10敗を喫していた状態を振り返れば、これは相当な復調だ。1カ月で5割に戻すことができれば今後にも期待が持てる。近本光司がスタメン落ちするなど常に課題はあるが、まずは5割に戻したい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対中日 5回表中日2死、大野雄の一ゴロでベースカバーに入る青柳(右)(撮影・清水貴仁)
阪神対中日 5回表中日2死、大野雄の一ゴロでベースカバーに入る青柳(右)(撮影・清水貴仁)