梅野が「2番捕手」に入った阪神のスタメン(撮影・上田博志)
梅野が「2番捕手」に入った阪神のスタメン(撮影・上田博志)

スタメンを見て「おっ?」と思った。梅野隆太郎が前日に続き「2番捕手」だった。前日、広島の先発投手は左腕・床田寛樹。3番打者が固定できないなどの現状を受けて梅野の2番起用は、熟考した末の「奇襲」と理解していた。

この日の広島は右の遠藤淳志が先発だ。それもあって2番は左打ちの糸原健斗に戻すかと予想していたが、2試合続けて梅野となった。勝ったのだから変えたくない気持ちは分かる。前日は梅野自身も本塁打を放つなどいい結果も出た。

この日も接戦で勝った。「2番梅野」でここまで流れはいい。しかし梅野はこの日、実に3犠打を記録した。それが得点に結びついたのは1回だけだ。広島打線に元気がないので助けられた格好だが普通にいけば追い込まれる試合展開だったかもしれない。もちろん状況次第なのだが、やはり梅野の勝負強い打撃も見たいと思う。

1回裏阪神無死一塁、梅野は投前犠打を決める(撮影・前岡正明)
1回裏阪神無死一塁、梅野は投前犠打を決める(撮影・前岡正明)

昨季、梅野が打撃好調だったときに一部で「4番捕手」の可能性がささやかれたことがあった。そんな話を梅野にすると、普段はいつも明朗快活な男が表情を曇らせてこう言った。「誰がそんなこと言ってるんですかあ。いいですよ。そんなの。4番なんて」。

あるいは、ルーキーでこれも打撃がよかったころ、その理由について聞いたときこんな感じで答えた。「いまは8番なので三振でもいいと思い切って気楽に打たせてもらってます」。

当然と言えばそれまでだが、要するに梅野は打順を考えながら野球をするタイプなのだろう。2番打者だとどうなるのか。元々、バントはうまい。右打ちもできるので仕事はできるのだが、なんとなくもったいないという気も出てくる。

なにより捕手は激務だ。2番打者は前後のつなぎや小技など神経を使うところ。その2つを“兼務”するのは大変だろう。指揮官・矢野燿大も前日に「(梅野は)バリエーションが多いので捕手でなければ2番というのもあり得る」と話していた通りだ。逆に言えば「2番捕手」は、やはり奇策なのだ。

13日は先発・藤浪晋太郎だ。体を張ってワンバウンドの球を止める梅野の姿が今から目に浮かぶ。それがなければ藤浪の良さが出ないのだから、それは仕方がない。一時は体調も心配された梅野に頼る状況はいつまで続くのか。梅野が下位で1発を狙える打線になるのがベストだと思うのだが。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

広島に連勝し、大山にサムアップする梅野(右端)ら阪神ナイン(撮影・岩下翔太)
広島に連勝し、大山にサムアップする梅野(右端)ら阪神ナイン(撮影・岩下翔太)