沖縄の太陽はいつものように温かく迎えてくれた。首脳陣、関係者らが乗った大阪国際空港発の“阪神チーム便”でともに那覇空港に降り立った。双方の空港とも例年なら避寒、レジャーの観光客でごった返している時期である。しかも阪神の移動となればどこから情報を聞きつけるのか、サインを求める少なくない数のファンが空港で待っている光景が常だ。

しかし今年は違う。待っているファンはまったくいなかった。何より空港自体が閑散としている。長く野球、キャンプを取材する記者をさせてもらっているがこれは初めての体験だ。

もちろん長引くコロナ禍の影響だ。こちらも緊張しながらの移動になった。関係者の表情も一様に堅い。それはそうだろう。1カ月におよぶキャンプ中、実質、練習以外の外出は禁止とされている。ホテルと球場の往復。昨季も経験しているとはいえ、長丁場のキャンプはまた違う。

数少ない息抜きになるかもしれない夕食会場にも長い時間、腰を落ち着けられないという。ある関係者は冗談交じりに「部屋で飲めるよう、アルコールを調達しないといけないとね」と話した。

ちょうど1年前。このコラムで「今年は厳戒キャンプ」と書いた。新型コロナウイルスの影響が言われ始めた頃だった。広報が新聞、テレビの担当記者を集め、こんなことを伝えた。

「キャンプ中、サインなどのファンサービスをするとき選手らはマスクを着用する」

「ファンも体調が優れない場合は球場に来るのを自粛してほしいし、体調管理をしてほしい」

「記者、カメラマンも体調管理をしっかりしてほしい。手洗い、うがいを含めて」

異例の通達だったが、1年がたった今年はそれどころではない状況になった。まさかの無観客キャンプ。取材も記者数など大幅に制限される。

それでも、と思う。空港で荷物を待っている間、球団副社長兼本部長の谷本修がいた。ほんの少し雑談する。「とにかくキャンプができてよかったですね」。こちらと同じ感想だった。

どんな世の中になっても楽しみは必要だろう。その中でもプロ野球は老若男女が楽しめる質のいい国民的娯楽だと思っている。結果も過程も楽しく明るいシーズンにするため、阪神も我慢のキャンプが始まる。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

1軍全体ミーティングで選手に話をする川相昌弘臨時コーチ(球団提供)
1軍全体ミーティングで選手に話をする川相昌弘臨時コーチ(球団提供)
1軍全体ミーティングで選手の前に座る矢野燿大監督(左)と藤原崇起オーナー(球団提供)
1軍全体ミーティングで選手の前に座る矢野燿大監督(左)と藤原崇起オーナー(球団提供)