「佐藤輝明、サードいけるやん-」。そう思った虎党も多かっただろう。中日との練習試合に3番三塁でスタメン出場した佐藤輝。6回に高橋周平の三塁線を襲う当たりに体を倒し、逆シングルですくうなどセンスを見せた。

日増しに注目度がアップする佐藤輝。個人的に言わせてもらえば関西人ということに加え、関西のアマ球界でずっとプレーしてきたという点がいい。兵庫・西宮市出身。仁川学院から近大。そしてドラフトで巨人、ソフトバンクを含む4球団競合の末、めずらしくクジ運の強さを見せた阪神に入団したのは誰もが知るところだ。そしてこの中日戦、売り出し中の佐藤輝の加入でちょっと面白いことが起こった。

3番・三塁 佐藤輝

4番・中堅 井上広大

5番・一塁 陽川尚将

大阪出身、履正社から入って2年目の井上、やはり大阪出身、30歳のシーズンに勝負をかける陽川と合わせて「夢の生え抜き関西人クリーンアップ」が完成したのだ。

この並びになったのは腰背部の張りがあったという大山悠輔が出ていないことが最大の理由だろう。というか大山はこの時期の練習試合に出なくてもいい立場かもしれない。押しも押されもしない主砲だ。他はアピールする時期なのでこういうメンバーになる。それでもこのクリーンアップはなかなか痛快だ。

そもそも関西出身の大注目選手が阪神に入ったのは最近では藤浪晋太郎以来か。過去を振り返ってもそんなにはいないと思う。高校野球が盛んな大阪、関西が野球どころなのは誰もが知る。「KK」までさかのぼらずとも楽天復帰で話題の田中将大、巨人の4番岡本和真と多くの注目選手の口から出る言葉は関西のイントネーションである。

にもかかわらず関西を地元にする阪神で地元出身、生え抜きのスター選手はさほど多くない。特に数多く主軸を打ったバッターとなると名前が出るのは岡田彰布、桧山進次郎といったところだろうか。

世界中から選手を集める現代のプロ野球界にあって何を今更の地元志向…という考えもあるだろう。でも、だからこそ価値があるとも言える。いつか本当に佐藤輝、井上らの地元出身者でクリーンアップを組んで甲子園で暴れ回るチームになれば。それ自体、他球団にはなかなかマネのできないことでもある。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)