「レイニーブルー」か。ハスキーボイスの徳永英明を若い人は知っているのかなと余計な心配をする。おっさんたちは大好きだ。「壊れかけのRadio」をカラオケで歌った人も多いはず。打席登場のナンバーは今風一辺倒の中、そんな曲で打席に登場する青柳晃洋のセンスはなかなか面白い。自身が「青」で雨男だからか。「柳」の部分はどうしたのだろう。次は「柳ジョージ&レイニーウッド」の曲で出てきてほしい。

8回途中まで投げ無失点に抑える阪神先発の青柳(撮影・前岡正明)
8回途中まで投げ無失点に抑える阪神先発の青柳(撮影・前岡正明)

そんな青柳の投球はとても見応えがあった。入団した頃、制球難の時期を思えば圧倒的に安定感も増してきた。現在ではエース格といってもいいぐらいの頼もしさを感じさせている。だけど、ここはちょっと苦言を呈したい。勝ちたければちゃんとバントを決めなはれ、ということだ。

中日柳裕也との「柳対決」。先に降板することになったが緊張感あふれる投げ合い。特に阪神打線は9回まで二塁を踏めなかった。そんな展開だった6回。無死から8番の木浪聖也が内野安打で塁に出た。当然、青柳には犠打のサインが出た。しかし、これを決められずバント失敗。三振に倒れてしまう。

6回裏阪神無死一塁、青柳はバント失敗に終わる(撮影・上山淳一)
6回裏阪神無死一塁、青柳はバント失敗に終わる(撮影・上山淳一)

青柳は開幕2戦目の3月27日ヤクルト戦(神宮)でも同様の場面があった。青柳だけの問題ではなく、今季ここまで阪神は投手の犠打がうまくいっていない。それでも特にこの日は、あそこで決めておけば先制に成功し、自身が勝利投手になれた可能性もあった。それを思うと実にもったいないのだ。

「練習もやってるし、攻撃にも投球にも影響する部分なんでチームとして大事にしてきてる。課題として残っているよね」。虎番キャップたちに囲まれた指揮官・矢野燿大もその部分を反省していた。投球の部分を「もう少し行かせてあげたかった。本当に成長している」とほめただけに、余計、そう思うのだろう。

最後の場面。代打で糸井嘉男もあるか、と思ったけれど巨人から獲得した山本泰寛のサヨナラ打でホーム初勝利。そこにつないだ原口文仁の四球、さらに北條史也の犠打と現段階で脇役に回っている選手たちの着実な攻めはよかった。

そんな場面が最後に出たからこそ青柳もちゃんとバントできていればなと思ってしまった。9回打ち切り制もあって混戦模様になりそうな今季。雌雄を決するのは例年以上にそんな繊細な部分のような気がする。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

サヨナラ打を放った山本(左)とハイタッチする青柳(撮影・上山淳一)
サヨナラ打を放った山本(左)とハイタッチする青柳(撮影・上山淳一)