4番・大山悠輔に待望の1発が出て、チームトップ級のスターになった佐藤輝明も2試合連続2ラン。投げては秋山拓巳がめずらしく制球を乱す場面もあったが「勝利の方程式」につないでの完勝。5連勝で貯金9と阪神の勢いは止まるところを知らない。

それでも…と不安になる部分もあった。攻撃面だ。圧勝の中で得点圏に出た走者がかえってこられないシーンが目立った。2回の無死二塁。4回、佐藤輝の2ランが出た後の1死三塁。6回の1死二塁。いずれも後続なく、残塁となった。

3試合連続無得点と元気のない広島を相手にしての圧勝だが終わってみれば4-0。なんとなく試合を見ていれば、もっと点差があったイメージだった。

適時打が出ないのは仕方がないとしても足を使った攻撃も売りもののはずだし、特に2回など何かを仕掛けても…と思ったが特に動きはなかった。もちろんヘタに動いてチームの勢いに水を差す場合もなくはないのだが、ここは相手投手にプレッシャーをかける攻撃も見たかった。

「ヒットを打たずにどうやって得点できるか。それを打者に浸透させることを一番考えていました」。これは広島が3連覇していたころに打撃コーチを務めていた石井琢朗(現巨人野手総合コーチ)が言った言葉だ。もちろん石井だけでなく監督の緒方孝市(現日刊スポーツ評論家)らベンチの意思でもあった。

強いチームはしつこく得点するものだ。先発はもちろん2番手、3番手の投手からも得点していく。そうやって相手の反撃意欲を奪うのだ。この日の阪神、床田寛樹は攻略したが2番手以降には抑えられた。これで広島は「次こそは…」と思えるはずだ。

そうは言っても今の阪神は強い。先発陣が安定しており、ブルペンも好調だ。打線はクリーンアップに加えて6番までどこからでも本塁打が出そうな雰囲気である。なにより昨年までコロコロ変わっていたメンバーはほとんど不動だ。これはチームの状態のよさを示す現象だろう。

しかし逆に見れば、これほどの好調さが最後まで続くとも思えない。打者が不振になり、投手が疲れるときは必ず来る。そのときに重要になるのがしつこさだと思う。「勝ってかぶとの緒を締めよ」。好調な今こそ、打線のつながりをしっかり検証してほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)