宜野座のグラウンドは沖縄にある球場の中では特に仕上がりがいいと聞く。有名な「阪神園芸」の力に負うところが大きい。その名誉を守るため同社の甲子園施設部長・金沢健児は1月24日から乗り込んで整備を続けている。実に5週間の出張だ。

その金沢に以前から聞いてみたいことがあった。阪神は毎年、失策が多い。甲子園整備の責任者として、それをどう感じているのか。少し微妙だ。マスク越し、遠慮しつつ聞いてみた。

「そりゃあ、いい気持ちはしていないですね」。金沢は率直に口にし、こんな話をした。プロの試合が行われる球場全てが土のグラウンドならば甲子園球場は絶対に負けていないはず。だが人工芝に比べ、土のグラウンドにハンディーがあるのは事実。そう言った上で、少し力を込めた。

「でもね。鳥谷とか、関本とか。そういう選手もいたわけですから。鳥谷はゴールデングラブもとった。そういう意味で言えば外野手だけど近本が昨季、その賞をとってくれたのはすごくうれしかった。本当のところを言えば内野手がとってほしいんですよ」

OBの関本賢太郎は07年に3シーズンにわたる二塁手の「804連続無失策記録」を樹立している。長らく遊撃の定位置に君臨した鳥谷敬(日刊スポーツ評論家)の守備については言うまでもない。それを思えば甲子園が本拠地だから失策が多い…とは言えないことになる。

「巨人の坂本勇人にしても確かに最初は甲子園でポロポロしてましたよ。でも、だんだん、うまくなってきた。鳥谷なんてキャンプの特守をしているときでも、まったくミスしなかった。あれがプロでしょう」

金沢はそうも話した。球場整備の名人と言われる立場からすれば、ナインに守備で名を上げてほしいという気持ちはよく分かる。

「遊撃手の争い」は今季、1つのテーマだ。現在は2軍の安芸にいる中野拓夢が昨季の活躍からもっともレギュラーに近い位置にいるかもしれない。だが打撃面で成長を見せる小幡竜平ら若手もいる。小幡の遊撃はチームの中ではトップクラスだろう。

「甲子園だから不利」ではなく、土のグラウンドを本拠にしているからこそうまいんだ、オレたちは-。他球団の選手に対し、そう言って胸を張れるよう沖縄でたっぷり汗を流してほしいと思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

2022年1月23日、自主トレでノックを受ける中野(撮影・上山淳一)
2022年1月23日、自主トレでノックを受ける中野(撮影・上山淳一)