国鉄って。若い人は知らないかもしれない。「国鉄スワローズ」は65年までなのでさすがに記憶はないが「ヤクルト・アトムズ」は知っている。そんな話はどうでもいいけれど、この敗戦で阪神は25試合で20敗。50年に国鉄が喫した「23試合で20敗」に次ぐワースト記録という。要するに歴史的負けっぷりだ。

だから現実逃避するわけではないが、正直、この敗戦に限ってはあまりイライラしてこなかったのはなぜか。負けすぎてあきらめたわけではなく、チラリと見るべきところ、“気配”があったからかもしれない。

今季の新戦力でもっとも“当たり”と言えそうなウィルカーソンが先発で2試合連続で好投。青木宣親の1発だけで敗戦投手になったのは気の毒だった。

打線は1回、ベテラン石川雅規の立ち上がりをとらえ、1死満塁の好機をつくりながら無得点。またしても今季おなじみになった「あと1本が…」という展開でこれがもっとも痛かったのだが、その後に不運な場面もあった。

3回、佐藤輝明のライナーを右翼・太田賢吾が内野手のような横っ跳びで好捕。6回先頭の近本光司の当たりをこれも遊撃・長岡秀樹がダイビングキャッチだ。さらに5回、無死一塁から走者・中野拓夢と打者・梅野隆太郎で仕掛けたエンドランで梅野の打球が二塁ベース方向に飛ぶ併殺もあった。走者を動かしたときに中堅方向に打つのは避けたいのだろうが、いつもうまくいくとは限らない。

何より「やっと仕掛けたな」と思わせたのが1回の重盗だ。アウトにはなったが7回、代走・島田海吏の盗塁企図。5回もそうだが接戦の中、走者が出た場面で足を絡めて攻めようという姿勢は見られた。これが虎党が望んでいたことだ。

調子を上げてきたブルペンはこの日も抜群だった。ウィルカーソンを7回に救援した2番手・渡辺雄大、8回を3者凡退で切った若きセットアッパー・湯浅京己もよかった。プロに“善戦”はないけれど、つい、そう言いたくなる。

「打線の奮起が必要だしオレ自身もどうやって点を取るかというのを考えていかないといけないと思います」。指揮官・矢野燿大も当然のことを言っていたようだが、本当に必死でそうするべきだ。開幕約1カ月での「借金16」は重い。それでもできること、やるべきことをやっていくしかないのである。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ヤクルト対阪神 5回表阪神無死一塁、梅野は遊併殺打に倒れ頭を抱える(撮影・足立雅史)
ヤクルト対阪神 5回表阪神無死一塁、梅野は遊併殺打に倒れ頭を抱える(撮影・足立雅史)