あまのじゃくなのでリーグ戦再開を前にらちもない“妄想”を広げている。それは「矢野続投」という空気が生まれることはないのか、ということだ。

パ・リーグとの18試合を12勝6敗で乗り切り、阪神は借金6での再発進。この借りをどこまで返済し、さらに貯金をつくって上位を狙う戦いが始まる。

その戦いを前に阪急阪神ホールディングスの株主総会が15日に開かれた。株主から批判的、あるいはユニークな質問が飛び出すことで知られる総会。虎番キャップ・桝井聡によると「特に荒れる感じもなかったし、厳しい質問は1つぐらいですかね」。その質問は、当日に報道されていたがざっとこんな感じだった。

「矢野は何で辞める言うたんや。あんな自分勝手な人おらんですわ。辞めると分かってるんやったら、次、誰がなるんかが気になる。そればっかり気になって野球なんかどうでもいい」

監督人事だけが気になってシーズンの戦いはどうでもいいと言うのは、正直、野球は好きではない? とは思ったけれど一理はある。虎党だけでなく選手も、あるいはコーチも、いろいろ考えるだろう。取材する側も同じである。

そこで思う。万が一、ここから優勝、そこまで届かなくてもAクラス入りし、クライマックスシリーズも勝ち抜いたりしたらこんな声が出てこないとも限らないのではないか。「矢野でエエやん」-。

3年目を終えた昨オフ、指揮官・矢野燿大は引くことを考えたが球団の要請もあって留任。4年目に突入する直前に自ら「最終年」を宣言し、戦っている。開幕9連敗という過去最悪のスタートだったが、とりあえず落ち着いてきた。

踏ん張ったなと思うのはやめなかったことだ。いろいろな見方はあるが投げ出すのが一番、ラクだったはず。最悪の時期にそうせず、ここまで来ている。だからと言って低迷の責任がチャラになるわけではない。それでも、ここから逆襲して、万が一、いや「億が一」にでも勝てば、とんでもないシーズンになる。

「優勝してやめる」。矢野の理想はそれだ。だが奇跡的な事態が起こったとき球団は「お疲れさま」と言えるだろうか。もちろんそんな可能性はきわめて低い。さらに矢野自身にも課題は多いかもしれない。それでも歴史的逆転に成功すれば、そこから生まれる状況を見たい気もするのだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)