今季初の「貯金2」で首位ヤクルトに9ゲーム差と久々にひと桁差だ。10連勝10連敗でひっくり返るで! ゴイゴイスー! 芸人・ダイアン津田も登場した甲子園はそんな夢物語も飛び出しそうなムードだ。確かに阪神は乗っている。

その勝利で気になったのは2失点の6回だ。先発・才木浩人が村上宗隆に被弾したのだが、それを問題とは言えない。常に無失点で抑えられるはずもないのだ。もったいないと思うのはそのプロセスである。

この回、才木は先頭で迎えた1番・塩見泰隆に四球を出した。そこまで5回打者18人を相手に無四球投球。キレのいいストレートを中心に組み立て、3安打無失点に抑えていた。故障上がりとは言え、さすがに「将来のエース」と思わせるマウンドだ。

点差もすでに7点。5回裏、自分の打席では余裕で三振を喫していた。それでいいし、何の問題もない。だが6回の先頭に四球を与えてしまう。相手は俊足・塩見だ。はっきり言って安打なら仕方がない。しかし3ボールから1球だけストライクが入ったものの、結局、5球で歩かせた。

1死二塁となって3番・山田哲人の三ゴロを佐藤輝明がモタつき、併殺を取れない。その直後、村上に被弾。佐藤輝が処理できればよかったが、勝負はそういうものでもない。

「先頭打者の四球は失点になるんや。これは野球100年の歴史、昔からそう決まっとる」。いつもそう言っていたのは闘将・星野仙一だ。それが本当はどうかの検証はなかなか難しいだろうが勝負の流れの中で数限りなく、そんな場面を見てきたのも事実だ。

才木自身も分かっているだろう。6回を投げ終えた後、マウンドを降りる際、ガクッと首を垂れていた。りきみが出たのか。本塁打より無駄な四球を反省していたと思う。

「6回の壁」と話したのは指揮官・矢野燿大だ。打順が3まわり目に入る上、5回終了のグラウンド整備が終わって再び試合に戻るタイミングが難しい。チーム防御率が抜群の阪神投手陣、イニング別の得失点差は延長回を別として、ほぼ全てプラスだが6回だけは例外。この日で33得点42失点とマイナス9だ。

楽勝に見えるが勝負は紙一重。だからこその“締めどき”が重要だ。「奇跡」に近づくためにも、まさに「勝ってかぶとの緒を締めよ」である。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対ヤクルト 阪神先発の才木(撮影・上田博志)
阪神対ヤクルト 阪神先発の才木(撮影・上田博志)