2位と優位なDeNAの方が「短期決戦」の意気込みで戦っている印象だ。阪神はエースが失点し、打線が沈黙しての0点負け。虎党にすれば面白くない試合は、同時に、現状の両チームの違いを感じさせるものだったのではないか。

DeNAにとって今季の“最大の補強”がコーチ陣だと言われる。優勝を知るメンバーが指導者として戻ってきたからだ。中でも注目されているのは石井琢朗である。大洋=横浜、広島での現役時代はもちろん、3連覇時代の広島でコーチを務め、その後にヤクルト、巨人で指導。そして野手総合コーチとして今季、古巣に戻ってきた。実にリーグ4球団目だ。

その石井がよく話すのが「いかに1点を取るか」ということだ。「点を取る方法は安打だけではない。いかに先の塁に走者を進めていくか。それを考える」。その考えが長打力はあるものの、粗っぽい攻撃が特徴だったチームを変えると期待されている。

この試合、得点を許した場面でそれを感じた。1回は併殺間に先制を許す。2回1死二塁では進塁打で走者を進められた。3回は1回に併殺打を打った3番・佐野恵太がボールを見極め、四球で出塁。そこから得点だ。青柳が不調だったこともあり、総じてじっくり球を見てくるスタイルを感じた。前回は勝ったとはいえ、ここまで3敗している投手に対する厳しい姿勢があったと思う。

阪神ベンチも大山悠輔を左翼に回してまで原口文仁を一塁でスタメン起用。さらに前回の対戦で2安打している木浪聖也を使うなど打倒・今永昇太への対策を練ってきたと思うが勝利には結びつかなかった。

もったいないというか、もっとじっくりいってほしいと思ったのは3回。2死から中野拓夢が出た。何か仕掛けるかと思った瞬間、2番・島田海吏が初球を打って二飛。中前に抜けそうな当たりではあったが、ここは俊足コンビで何か動きを見たかった。初球からドンドン打っていくのは島田というか、いまの阪神打線の特徴だし、仕方がないのかもしれないが。

見た目以上にこたえる敗戦だ。阪神同様、いや、それ以上にDeNAはここをヤマ場と見ている。この日の戦いぶりを見る限り、3連敗のおそれすら感じてしまった。それを回避するためにも24日、伊藤将司が1回を抑えるところから再スタートだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対DeNA 1回表DeNA1死一、三塁、青柳は佐野の併殺打の間に桑原の生還を許す(撮影・上田博志)
阪神対DeNA 1回表DeNA1死一、三塁、青柳は佐野の併殺打の間に桑原の生還を許す(撮影・上田博志)
阪神対DeNA 3回裏阪神2死一塁、島田海吏はバットを折られ二飛に倒れる(撮影・上田博志)
阪神対DeNA 3回裏阪神2死一塁、島田海吏はバットを折られ二飛に倒れる(撮影・上田博志)
阪神対DeNA 2回表DeNA2死一、三塁、青柳は今永に左前適時打を浴び失点する(撮影・上山淳一)
阪神対DeNA 2回表DeNA2死一、三塁、青柳は今永に左前適時打を浴び失点する(撮影・上山淳一)