久々の甲子園は雨にたたられた。先発投手は登板日に雨が多く「雨柳」の異名を持つ青柳晃洋だ。マウンドに上がった途端、台風11号の影響を受けた雨の影響で試合開始が45分も遅延。そして阪神のラッキーセブン、7回裏の前にも15分間の中断である。それでも甲子園に戻った阪神を歓迎する虎党を中心に3万7234人の観衆は、じっと試合を見守っていた。

その様子を眺めながら記者席に座る。そこで、ある球団関係者と話す機会があった。ある話題で意気投合する。「もう9月ですね。できれば最後は甲子園で終わらせてあげたいですよ。そのためには…」。関係者のいう話に「そうやなあ」と思わずうなずいた。

いうまでもなく指揮官・矢野燿大のことである。2月のキャンプ直前に「今季限りで監督を引く」と宣言。その影響があったのかどうか開幕9連敗を喫する苦しいスタートを切りながら、ここまで戦ってきた。

その采配、選手起用には批判もあったが過去3シーズンで3位→2位→2位と続け、今季もAクラス入りが可能な位置につけているのは結構な実績だろう。その懸命に戦ってきた4年間のラストを飾るのはどこになるのか、という話だ。球団の人間が主催試合の雨天中止を期待…とは大きな声では言えないことだけど心情的には分かる。

現状の日程では9月28日のヤクルト戦(神宮)が最後だ。ここまで来ればヤクルトの優勝は堅い。そのままのスケジュールなら連覇を果たしたヤクルトとの対戦。同学年の敵将・高津臣吾との戦いが最後になる。それはそれで意味があるかもしれない。

それでもできるならば甲子園で終わらせたい。そんな気はする。そのためにはこの週末の巨人戦あたりを1つ雨で流せば、それが最後のカードに入るのでは…。そんな予想だった。

もちろん可能性はそれだけではない。3位ならクライマックス・シリーズは敵地での戦いだ。そこで敗退すれば、やはり敵地ラストになる。だが、もしもそこを勝ち抜くことができれば日本シリーズに出場できるのだ。その場合は当然、甲子園での試合も開催される。可能性としてはかなりかなり薄いけれども。

青柳が粘り、大山悠輔が決勝弾。新・勝利の方程式もはまった。9月の戦いに希望を持たせる白星は、雨の中、粘った虎党がもたらしたものかもしれない。(敬称略)

阪神対広島 7回、力投する阪神青柳(撮影・上山淳一)
阪神対広島 7回、力投する阪神青柳(撮影・上山淳一)
阪神対広島 7回表、選手交代を告げる矢野監督(撮影・加藤哉)
阪神対広島 7回表、選手交代を告げる矢野監督(撮影・加藤哉)
阪神対広島 ヒーローの阪神ケラー(手前)と大山(撮影・上山淳一)
阪神対広島 ヒーローの阪神ケラー(手前)と大山(撮影・上山淳一)