直接の敗因はクローザー岩崎優の不調だろう。2点リードの9回に出てきて、3失点ではやはり試合にならない。しかし問題はそこだけでなく、試合が進むにつれて感じる「ベンチの硬さ」のようなものではないかと思って仕方がない。

最近、不調が続く先発・青柳晃洋はこの日も立ち上がりから苦しい内容だった。それでも経験と責任感から佐野恵太の一発だけで5回をしのぐ。特に5回は「これで最後だ」とばかり気合の入った球で桑原将志を三振に。3者三振で締めてベンチに戻ったのだ。

だが同点だったその裏、阪神ベンチは青柳を打席に送る。たしかに1死無走者だったが西純矢をブルペンに入れるなど勝つために投手を注ぎ込む態勢はつくってきているはず。「勝利」を何よりの目標にしているのならここは代打で勝ち越しへ向かう場面だったのではないか。指揮官・矢野燿大のいう「積極性」は継投面でも必要だろう。

最後の場面もそうだ。岩崎は1度、疲労などを考慮して抑えから外している。その後「復調した」という判断で戻した。それはいい。しかし、この日のマウンドを見れば苦しいのは分かっただろう。

「任すしかなかったんで」と矢野は言った。もちろん選手のプライドは大事だ。「任せる」と決めたらそうしなければならないときはある。何より選手の気持ちを配慮しなければならない場合はあるだろう。それでも、やはりここは「勝利」が重要ではないのか。残りはわずか5試合。いきなり連打された場面でブルペンに残る湯浅京己の投入を期待した虎党も多かったのではないだろうか。

優勝はない。2位もまずない。おまけに3球団横並びでの3位争いという状況だ。ここは「より柔軟に」というか、それこそ「何でもあり」の日本シリーズのような短期決戦のつもりで戦ってほしいと思う。

そうするからこそ見ている方も楽しいのだ。8回に本塁打した陽川尚将の表情を見ていて「これだ」と思った。お得意のゴリラ・ポーズもできないほど周囲に手荒く祝福された。うれしい、そして楽しい。そんな気持ちを、来季も戦うナインが知ることは重要だ。

首脳陣がそう思うのは無理だろう。だが選手には思わせなければならない。そんな戦いができるか、どうか。決戦ムードを醸し出せるのか、どうか。そこを見たいのだ。(敬称略)(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対DeNA 9回表DeNA1死満塁、岩崎は楠本に勝ち越し適時打を打たれうなだれる(撮影・加藤哉)
阪神対DeNA 9回表DeNA1死満塁、岩崎は楠本に勝ち越し適時打を打たれうなだれる(撮影・加藤哉)
阪神対DeNA 8回裏阪神無死、代打陽川は左越えソロ本塁打を放ち同点とする(撮影・加藤哉)
阪神対DeNA 8回裏阪神無死、代打陽川は左越えソロ本塁打を放ち同点とする(撮影・加藤哉)