最終盤の142試合目のここにきて、まだこんなプレーが出るのかいな、という感じである。新首脳陣の布陣などが報じられて、まさか浮足立っているとは思わないけれど、しっかりしてくれと言いたい。

同点の8回だ。この回先頭の2番・糸原健斗が歩いた。無死一塁。ここで阪神ベンチは代走に俊足・島田海吏を送った。3番・近本光司との間でエンドランをかけたがファウルになって決まらず、最終的に犠打で進めた。貴重な走者。これはいい。

そして4番・大山悠輔は中堅手がフェンスにつきそうな、大きな中飛。「惜しい。それでも、これで2死三塁か」。そう思った瞬間、島田が二塁に戻っているところを目撃してしまう。タッチアップしていないのか。これは厳しい。

島田の足なら、大山の当たりが野手の間を抜けるか頭を越した段階でスタートしても生還できるはず。何を焦るのか。結果的に5番・原口文仁が左前打を放って島田は勝ち越しのホームを踏んだ。

決勝打の原口はバックホームを予想して二塁に走り、最終的にカットマンから来た送球でアウトになった。これはよく見るプレーである。しかし2死三塁からの適時打ならこんな動きにはならない。外野はバックホームしないし、1点を取って、なお2死一塁。打席には佐藤輝明という場面になっていた。

遠慮なく言わせてもらえば相手が真剣に勝ちにきている試合なら、これは影響するプレーだろう。いまヤクルトで大事なのは村上宗隆が56号を打てるか否か。そう決めつけるのもどうかとも思うけれど大きく外れてはいないだろう。

この日も将来へ向け、プロ初先発の市川悠太や1番スタメンの赤羽由紘ら若手を起用している。正直、勝敗は二の次…という感じだ。連覇も決めているし、当然と言えば当然である。

その相手に阪神は結構な苦戦だ。中野拓夢の2試合連続先頭打者弾で試合を優勢に進めながら走者を出しても続かない沈滞ムードが漂った。そして8回のプレー。この期に及んで何をしていると思ってしまう。

「これで(神宮が)終わりとは思っていないし」。東都の虎党からエールをもらった指揮官・矢野燿大はそう言った。それこそ「そらそうよ」である。最後まで粘るためにも締めるところは締めていけ。最後まで。強く、そう思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ヤクルト対阪神 神宮球場最終戦を終えあいさつする矢野監督ら阪神ナイン(撮影・加藤哉)
ヤクルト対阪神 神宮球場最終戦を終えあいさつする矢野監督ら阪神ナイン(撮影・加藤哉)