「いろんなことがあったよな。それが野球かも分からんけど。ふう~」。指揮官・岡田彰布も大息をつきながら話したロッテ戦だ。「いろんなこと」の中で、抑えの湯浅京己が9回に3点差を追いつかれたのが最大のものだったかもしれないが、とにかく勝った。やはり3連敗はせず、雨天中止後の初勝利である。

その勝利で地味ながら勝利に貢献している救援投手の存在を感じた。加治屋蓮だ。先発・大竹耕太郎がタテジマ初被弾し、1点差に迫られた7回1死から登板。1安打は許したものの無失点でリードを守り、マウンドを後にした。

これが今季20試合目の登板。20試合以上を投げている救援投手はセ・リーグに11人いるが防御率0・00は加治屋だけ。他球団に誇るブルペン陣の一角をしっかりと占めている。

さらに「どこでも投げる」というのが加治屋の特徴だ。阪神が連敗を喫した1日西武戦(ベルーナ)。2点ビハインドの7回あたまから登板し、1安打を許したものの無失点に抑えている。この試合はそのまま敗戦となった。

現状で勝ちパターンに入っているレベルの投手がビハインドでも平然とマウンドにいく。岡田の持論の中に「敗戦処理投手、負けパターンはをつくらない」というものがあるが、加治屋の存在はそれに当てはまっているのかもしれない。「大きい、大きい。一番、抑えてるんちゃうか」。岡田も加治屋について、そう高く評価している。

この試合、ロッテは1点ビハインドの8回に3番手として沢村拓一をマウンドに送った。加治屋と同じ背番号「54」。ロッテ担当・鎌田直秀は「沢村は基本、勝ちパターンで投げるので少し意外な気もしました」と言う。

沢村は5月31日巨人戦(ZOZOマリン)で同点の8回に登板したものの岡本和真、中田翔に連続本塁打を浴び敗戦投手になっている。それ以来のマウンドだった。敵将・吉井理人は勝ちパターンとそうでないところは分けるという。

独断と偏見で言えば「カツを入れる」意味もあったかと感じたが結果は裏目に出たか。いや、その後、ロッテは一時は追いつき延長戦に突入させたので奏功したと言えるかもしれない。いずれにせよブルペンは試合を左右する。「守りの野球」を掲げる岡田にとって今後もそこがポイントなのは間違いない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対ロッテ 8回裏阪神無死一塁、ボークを取られる沢村(撮影・和賀正仁)
阪神対ロッテ 8回裏阪神無死一塁、ボークを取られる沢村(撮影・和賀正仁)
無失点に抑えた阪神2番手の加治屋(右)は大竹の出迎えを受ける(撮影・上田博志)
無失点に抑えた阪神2番手の加治屋(右)は大竹の出迎えを受ける(撮影・上田博志)
11回裏阪神1死満塁、小幡(右)の中前適時打でサヨナラ勝ちとなり抱き合う湯浅(撮影・加藤哉)
11回裏阪神1死満塁、小幡(右)の中前適時打でサヨナラ勝ちとなり抱き合う湯浅(撮影・加藤哉)
11回裏阪神1死満塁、小幡の中前適時打で放ちサヨナラ勝ちとなりナインが笑顔で駆け寄った(撮影・加藤哉)
11回裏阪神1死満塁、小幡の中前適時打で放ちサヨナラ勝ちとなりナインが笑顔で駆け寄った(撮影・加藤哉)