「足が震えるような応援をお願いします」。大歓声に包まれたお立ち台で木浪聖也はそう言った。日本シリーズ出場へ王手をかけたヒーロー。その話は虎番記者の記事でじっくり読んでいただくとして、ここでは木浪が「関西、関西人は好きではなかった」-という話を書いてみたい。
木浪は青森出身。野球の名門・青森山田で中学、高校時代を過ごした。高校野球ファンならずとも知っているだろうが、同校はいわゆる野球留学も多く、関西地方など他府県から進学してくる選手も多い。
木浪が入部したとき、同じ内野手の先輩に関西出身者がいた。初対面でその先輩は「じぶん、どこから来たん?」と質問してきたという。念のために書けば関西弁で「じぶん」というのは二人称だ。
「あおもりです」。普通に答えた木浪。だが生まれたときから青森である青年の発する言葉は当然、青森弁のイントネーション。それに驚いたのが、その先輩だった。「じぶん、めっちゃ、なまってるやん!」。
大阪出身のこちらとしては独断と偏見、さらに自省を込めて書く。関西人には方言の強い人に接すると妙に楽しくなるというかネタにしたくなる人が多いような気がする。これについては東京、関東人と大きく違う点ではないかと感じるのだ。もちろん個人差があるのは当然だが。
木浪の、その先輩が失礼なのは言うまでもない。それでも、なんとなくその気持ちが分かる気がする…と言うとしかられそうだが、ひょっとしてコミュニケーションのつもりだったかもしれない。
それでも普段から「そうだ」というのを「ンだ、ンだ」と言っていた木浪にすればその言葉に傷ついた。大学は東京の亜大に進んだが、これがトラウマになり、ずっと「関西人は苦手」と思っていたという。
しかしドラフトで入団したのは関西の権化・阪神だ。周囲は関西人だらけ。最初は慣れなかった。それでも次第になじんできたという。今季は復活を果たした感じもあるし、甲子園でのゲームをそれこそ楽しんでいるようだ。何より、木浪は阪神に強い愛着を持っている。
「だって阪神みたいにファンが懸命に応援してくれるチームはそうはないと思いますよ。それは分かります」。関西生活5年目。そして強い阪神の顔になってきた。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




