おそるべき「普段着野球」だろう。投手を中心にした守りの野球-。指揮官・岡田彰布が掲げる理想のスタイルはシーズンの戦いと同じでも、そのまま短期決戦に通用すると証明した。

「そら紙一重やったと思うよ」。岡田がそう評したように、CSファーストステージを勝ち上がってきた広島と3試合とも接戦を繰り広げたのは間違いない。しかし、それでも甲子園の大歓声の前で負ける気配はまったくしなかった3連勝だ。その結果として、ストレートで日本シリーズ進出を決めたのである。

「普段着野球」の中でも特筆すべきは3試合とも野手は8人で戦ったことだと思う。代打、代走、守備固めは投手以外の打順では一切、なし。「それが普通やろ」。岡田はそう軽く言ったが近代野球では異例とも言えるスタイルだ。そこを重ねて聞くと、ふと表情を変えて岡田は言った。

「…試合に出てへん言うても、みんなベンチでやっとるで。出てなくても、やっとるんよ」。このあたりは“岡田語”なので難しいが、つまり、試合に出ていない控えの選手たちもベンチで懸命に戦っているということだ。

チャンス、ピンチで声を出し、もしもの出番に備えてしっかり準備をする。当然と言えば当然だが、そういう行動を取っているのだ。もちろん、指揮官としてそれを十分、理解している。だからこそ「みんな、やっとるよ」ということなのだろう。

陳腐な言葉になってしまうかもしれないが、これが「全員野球」だ。とっかえひっかえ、選手を注ぎ込むだけがそれではないのかもしれない。勝利に向かって全員で集中して戦う。岡田はそのエネルギーをビシビシと感じている。

「そりゃあ出たいですよ。もちろん。試合に出て、打席に立ってビシッと決めたい」。3試合とも出番がなかった原口文仁はそう言った。野球選手なら誰でもそうだろう。オレがやってやる。オレが決めてやる-。そう思ってジリジリと構えているのだ。

そのチャンスはまだ残っている。しかも日本シリーズという最高の舞台で、だ。03年、闘将・星野仙一の下、コーチで日本一を逃した岡田は05年、指揮官として「忘れものを取りにいく」と評した。しかし、そこで敗れてしまう。あれから18年。今度こそ頼もしいナインとともに。それを取りに行くときだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対広島 日本シリーズ進出を決め、インタビューに答える阪神岡田監督(撮影・藤尾明華)
阪神対広島 日本シリーズ進出を決め、インタビューに答える阪神岡田監督(撮影・藤尾明華)
阪神対広島 日本シリーズ進出を決め笑顔で選手らを迎える阪神岡田監督(右端)(撮影・足立雅史)
阪神対広島 日本シリーズ進出を決め笑顔で選手らを迎える阪神岡田監督(右端)(撮影・足立雅史)