なんだか懐かしいような指揮官のカミナリだ。昨年の日本一達成から終始ご機嫌だったが、ここに来てのお怒りモード。もっとも「いいものはいい、あかんものはあかん」とハッキリさせる岡田彰布のスタイルからすれば、別に珍しいことではない。とはいえ久しぶりだったので衝撃的だったかもしれぬ。

先発・伊藤将司はいきなり7失点だし、失策も出るし、期待の福島圭音はすぐ走らないし…。イライラのタネは多いが、最たるものは湯浅京己だろう。「投げてる最中に(明日から2軍と)言うたよ」というのも相当だが、これも「勝利の方程式」の一員として期待するからこそと思う。

さらに言えば開幕の相手、そして「打倒阪神」をもっとも意識しているであろう巨人を相手に、敵地に乗り込んで今年初のオープン戦。節目を大事にする岡田だけに、そこでシャキッとしない姿を目の当たりにし立腹したのかもしれない。

ここまで書いて、勝手に、いやいや、ひょっとしてこれは連覇に向けて“吉兆”ちゃいますか? などと、能天気に構えている。それは昨年のこの23日、天皇誕生日を思い出すからだ。

この日、1回の伊藤将の投球を見ながら「1イニング7失点なんてあったかな?」と首をかしげた。記録部に確認してもらうと、やはり公式戦では皆無。1イニングとしては5月3日の中日戦などで記録した「6失点」がワーストだ。

だが「7失点」は昨年1度だけあったのである。それがちょうど1年前、昨年2月23日に北谷で中日と行った練習試合だ。その6回に阪神は7失点している。火だるまになったのは桐敷拓馬だ。そのとき岡田は桐敷に何と言ったか。

「ああいう形をこの時期で見せるのはきつい。枠は少ないからな、1軍の。あのへんが一番アピールせなあかん立場やけど。結果があんなんなったらな…」。そうバッサリ言って、2軍に落としている。

しかしシーズンからポストシーズンが終わってみれば、そのタフネスぶりでブルペンの一員として活躍。岡田をして「スペードのエース」と独特の表現で称賛させたのは桐敷だった。

湯浅にしても同じではないか。月日は着実に進んでいくが開幕はまだ1カ月、先だ。カミナリに打たれてシュンとするのではなく、改善するべきところはして、再び、平然と戻ってくればいいのだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

巨人対阪神 9回表、戦況を見守る阪神岡田監督(撮影・河田真司)
巨人対阪神 9回表、戦況を見守る阪神岡田監督(撮影・河田真司)