一瞬の判断、その難しさ-。この試合、興味深いと思ったのは勝敗を左右するシーンにそれが絡んだということだ。時に最近は試合を行わない札幌ドームでのゲームである。勝った日本ハムにも、そして阪神の側にもそれがあったと思う。

阪神に幸運だったのは1点を追う3回か。2死一、二塁で中野拓夢が放った当たり。これを日本ハムの右翼・水谷瞬がうまく処理できず、一時逆転の適時二塁打となった。順当なら今季も右翼のレギュラーは守備のいい万波中正だろう。万波なら二塁打になったかどうか。そう見えた。

阪神のそれは8回に出たと言える。2死一塁から浅間大基の打球は左前へ飛んだ。安全に前に落として安打にするか、思い切って捕球にいくか。判断の難しいところだったが途中から左翼守備に就いていたミエセスが前に出てこれをはじき、勝敗を分ける1点を与えてしまった。

「静から動」が常の野球で「一瞬の判断」がうまく働くかどうか。それが勝負の行方に大きく関わることをはっきり示したと思う。ミエセスが左翼を守るケースはそう多くはないと思うが、チームにとってもあらためて考える場面だったのではないか。

そんな試合で「いいな」と思ったのが6回、佐藤輝明が見せたタッチアップである。1死から中堅フェンス直撃の二塁打で出た佐藤輝。続く森下翔太の一邪飛で三塁へ進んだ。一塁手・福田光輝の捕球体勢が後ろ向きで当たり前にも感じる。だが外野守備走塁コーチ・筒井壮の見方は違った。

筒井 当たり前…ではないですね。打球の飛んだ位置、この球場の広さ、一塁手の捕球の仕方などを考慮した上で準備通り行動できたナイスプレーだったと思います。

うれしいのは、これが近本光司や中野、あるいは木浪聖也といったタイプの選手の走塁でないことだ。独断と偏見? で言って、これまでの佐藤輝は、そういう緻密さのようなものには縁遠く見えていた。

佐藤輝 体勢が悪かったのでいけるかと思って。先の塁を狙うのはずっとやっていることなので。

逆の見方をすれば、本来の持ち味である豪快さに細やかさが備われば打撃はもちろん、守備面にも反映されるかもしれない。言い方を変えれば「成長する。大人になる」ということだろう。今季の佐藤輝は楽しみかもしれない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

日本ハム対阪神 6回表阪神1死二塁、森下の一邪飛で三塁にタッチアップをする二走佐藤輝(撮影・佐藤翔太)
日本ハム対阪神 6回表阪神1死二塁、森下の一邪飛で三塁にタッチアップをする二走佐藤輝(撮影・佐藤翔太)
日本ハム対阪神 6回表阪神1死二塁、森下翔太の一邪飛で三塁へ進む佐藤輝。野手阪口(撮影・藤尾明華)
日本ハム対阪神 6回表阪神1死二塁、森下翔太の一邪飛で三塁へ進む佐藤輝。野手阪口(撮影・藤尾明華)