この試合は佐藤輝明だろう。独断で思った。先発・大竹耕太郎をはじめ、光った選手は多い。だが「4番・三塁」と、昭和の野球を知る人ならその言葉だけでワクワクする存在として力を発揮したと思う。

もっとも光ったのは本塁打だ。だが、そこまでの内容も悪くなかったと思う。1回、1死二塁で迎えた最初の打席。ここでカスティーヨから二ゴロ。2打席目は4回、無死二塁の場面。ここも二ゴロだった。これで二塁走者の前川右京は三進。5番に入っていた糸原健斗が犠飛を打ち上げ、2点目を挙げた。

虎党なら覚えているはず。15日の中日戦(バンテリンドーム)。0-0の9回、無死一、三塁で佐藤輝に打順が回った。ここで空振り三振した佐藤輝に対し、不満を示したのは指揮官・岡田彰布だった。

「転がしたら得点が入るやないか。三振では何も起こらない」。野球好きならすぐに納得できるような言葉を発したのだ。もちろん三振しようと思ってしている訳ではないので、言われる方にすれば厳しいかもしれないが主力打者ならそういう部分も見せろ-ということだったと思う。

佐藤輝がその言葉をどこまで意識していたかどうかは分からないが、この試合に限っては2度まで進塁打を放ったということだ。しかし下位打者ならそれができるだけでもいいが、プロの主軸打者ならガツンというのも見たい。佐藤輝は6回にそれを実践した。状況に適した打撃あり、長打あり。こういう姿を見せていけば、ますます佐藤輝の値打ちは上がっていく。

いずれにせよ、勝負は負けるより勝つ方がいい。たとえオープン戦でも。それがしっかりした試合内容ならなおさらだ。4-2での勝利は、そう思わせるものだったと思う。

投手の大竹耕太郎を9番に入れた実戦モードは今年初。開幕まで1週間を切った。そろそろエンジンをかけていかなければ。それはオリックスも同じ。敵将・中嶋聡はいわゆるベストメンバーを組んだが阪神はそうしなかった。

近本光司、大山悠輔、そして森下翔太が外れた。休養は気になる部分のある主力は大事を取った形。それはいいというか当たり前である。無理して試合に出るタイミングではまったくないだろう。だからこそ出ている主力の1人である佐藤輝がこういう姿を見せれば安心できる。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対オリックス 6回裏阪神無死、佐藤輝は右越えソロ本塁打を放つ。投手はカスティーヨ(撮影・加藤哉)
阪神対オリックス 6回裏阪神無死、佐藤輝は右越えソロ本塁打を放つ。投手はカスティーヨ(撮影・加藤哉)
オリックス対阪神 6回裏阪神無死、右越えにソロ本塁打を放ち ナインとタッチを交わす佐藤輝(撮影・藤尾明華)
オリックス対阪神 6回裏阪神無死、右越えにソロ本塁打を放ち ナインとタッチを交わす佐藤輝(撮影・藤尾明華)