ちょっと不思議な感じもする“発表”だった。言うまでもない指揮官・岡田彰布の退任劇だ。クライマックスシリーズへ向けて練習が再開された6日、阪神球団社長・粟井一夫が岡田の今季限りでの退任、フロント入りを明かした。

一般にはこういう発表は事前に告知し、報道陣を集めるものだが、そこは常に新聞からテレビから記者がうじゃうじゃいる阪神、即席の囲み取材で十分、公式発表になるのだ。そこで何が不思議なのか、と言えば当の岡田がこの日は“取材拒否”だったからだ。

練習前のミーティングで選手たちに退任を伝えた上で、あらためてCSへの心構えを話した岡田。だがスポーツ紙の虎番キャップをはじめ、報道陣に対して口を開くことはなかった。

「不思議」と書いておいて言うのもおかしいが、まあ、分かるのだ。このタイミングで話すことはない、あるいは話す気はしないのが岡田の本音だろう。そして報道陣もそれを受け入れ、無理にコメントを取ることはしない。事件や事故ではないのだ。話したくなければ仕方がない。

まだ真剣勝負を控えているのに退任報道が出て気の毒、試合に集中させてあげたい、そんな声もあるようだ。もちろん、その考えも分かる。だが、これもいつものこと。かつては球宴の頃から来季の陣容に向けて動き出すのがこの世界の常識だった。それを考えればスケジュール的に、来季が話題になるのは当然だ。

来季どうなる? 誰が監督に? コーチは? そういう興味も含めて、プロ野球の面白さだろう。そう言い切れば乱暴かもしれないが、長い間、取材を続けていて、その部分を感じるのは事実。注目度の高い阪神は特にクローズアップされるがどの球団も同じだ。

大事なのは実際に戦う選手たちが動揺しないことだと思う。チーム内ではベテランにあたる原口文仁とこの日、少し話をした。現状をどう思っているのか。

「やるだけですよ。やるだけ。日本一、目指してね」-。答えはシンプルだった。全力を出すのはファンのため、自分のため、家族のため、だ。もちろん昨季、日本一に導いた岡田のためでもいい。ハッキリしているのは6球団だけに残された熱い戦いをファンは待っている。「そんなん、やるだけよ」。この日、岡田が口を開いていれば、そう言ったはず。ベンチもナインもきっちりやってほしい。(敬称略)

グラウンドを引き揚げる阪神岡田監督(撮影・藤尾明華)
グラウンドを引き揚げる阪神岡田監督(撮影・藤尾明華)