今季初めて甲子園に巨人を迎えた25日は「レジェンズ・デー」だった。江夏豊、田淵幸一、掛布雅之ら往年のファンなら見ているだけで涙が出てくる面々が顔をそろえたのである。
特に江夏だ。掛布が押す車椅子に乗り、甲子園のマウンドに登場。「ファースト・ピッチ」のセレモニーで投球ポーズだけではあったものの左腕を振った。「子どものとき、テレビで見たなあ」…。こちらもウルッときてしまった。
こうなれば絶対に負けられない試合である。それでも負けるときは負けるのだが阪神は勝った。それもエース村上頌樹が好投し、主砲・佐藤輝明が中堅へ豪快に3ランを放り込む理想的な展開。甲子園に詰めかけた今季最多4万2628観衆の大部分を占める虎党は熱狂、今季本拠3度目の「六甲おろし」も大いに盛り上がったのである。
そんな試合の中で“不思議なプレー”があったのを見ただろうか。それは3回、村上が迎えた唯一のピンチで起きていた。1点リードの2死満塁。ここで吉川尚輝の打球はセンターを襲う。中堅・近本光司が背走。足が止まり、捕球体勢に入った。そしてキャッチ。だが次の瞬間、そのまま転んでしまうのである。
滑り込んでの捕球やダイビングキャッチなどはあるが取ってから転倒するとはどうしたことか。気になった。解説したのは外野守備兼走塁コーチ・筒井壮だ。
「いろいろな条件があったんですよ。薄暮の時間で打球が見えにくかったのに加え、きょうはめずらしく風がホームからセンターへ全方向フォロー。普段と違う感じだったんでしょうけど、よく取りました。あれは大きいですよ」
近本本人も具体的に話した。「気づいたら(打球が)頭の上に来ていたんで。だから取るときに体が反る感じになったんですね。それでコケました!」。普段のように捕球ポイントを取ったら予想より球が近くに来ていたということか。そこで反応できたのはプロの反射神経だろう。
あの打球が抜けていたり、あるいは近本が落としたりしていれば…。試合の流れは変わっていたかもしれない。そうなればせっかくのレジェンズ・デーも台なしになってしまう。だが近本はコケても取った。無安打だったが大きな仕事だ。これで阪神は5連勝。「貯金5」で3、4月の月間勝ち越しも決定。記念の日に気持ちのいい勝利である。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




