大竹耕太郎と井上温大の投手戦。少し驚いたのは8回、巨人の攻撃だ。

先頭の代打キャベッジが内野安打で出て無死一塁。ここで打席は1番・丸佳浩に回った。丸はここまで2安打。大竹にとって、しのぎどころやな…と感じたが巨人ベンチの策は犠打だ。丸はこれを投手前に決め、1死二塁と得点圏に走者を送った。しかし後続なく、無得点に終わったのである。

こちらは「おや?」と思ったがBS朝日で解説していた前監督・岡田彰布(オーナー付顧問)も同じような印象を受けた様子だ。「えっ? 1点ほしいんだろうね。丸が打って引っ張っていくという、そういうね。岡本(和真)がいない中でね」。控えめなトーンながら驚いたようにそう話したのだ。

敵将・阿部慎之助には自分なりの考えがあったはず。主力選手にときに犠打を命じるのは巨人ではあることだ。前監督・原辰徳は「それがイヤなら巨人軍でなく個人軍になってしまいますから」と話したこともある。結果が違えば思い切った作戦になったはずだ。

その勝負手が実らなかった裏、阪神に好機がやってくる。2死から森下翔太、佐藤輝明が歩き、2死一、二塁で打席は5番・大山悠輔に回った。投手は3番手・田中瑛斗にスイッチ。ここで思い出したのは試合前、少し指揮官・藤川球児が話していた内容だ。

「(田中瑛は)右打者用の投手なんでしょうね。ずっとそうかどうかは分かりませんが」。田中瑛についての話だ。試合前まで田中瑛は右打者に対し、2割5分8厘、左には3割8分5厘という数字だった。

それが頭にあったので、まさかなと思いつつ浮かんだのが大山に代打を出すかも…ということだ。左打者がいいなら糸原健斗も前川右京も残っている。もちろん大山は主力なのでそれはないだろうと打ち消したが数%ぐらい「ひょっとして…」という考えが頭をかすめたのである。

もちろん代打は出ず、結果は内野安打、森下の好走塁で決勝打となった。試合後、球児にそこを聞いてみたかった。右打者用の投手、大山に代打策はまったく考えなかった?

「大山は右に強いですからね」。球児はきっぱりと答えた。大山の対右投手の打率は2割7分。左は2割。主力というだけはなく、データ上でも指揮官は何の迷いもなかったということだろう。(敬称略)

【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対巨人 8回裏阪神2死一、二塁、遊撃手泉口(右)は大山の遊内野安打が取れず。手前は二走森下翔太(撮影・上山淳一)
阪神対巨人 8回裏阪神2死一、二塁、遊撃手泉口(右)は大山の遊内野安打が取れず。手前は二走森下翔太(撮影・上山淳一)