なんだか異様な試合ではあった。阪神が今季最多の4併殺、巨人が3併殺と両軍併せて7ゲッツー。こんなのもあまり記憶にない。すでに優勝の行方はハッキリしているとはいえ、これが「伝統の一戦」の持つ磁力か。阪神が接戦を制した中でも、そんなことを思わせるゲームだった。

そこで驚かせたのは佐藤輝明のプレーかもしれない。阪神が一挙に2点ビハインドをひっくり返した7回の攻撃。2死三塁で4番・佐藤輝の打球は右翼方向に高々と舞い上がった。しかし、どう見てもファウル。佐藤輝自身も「う~ん」という感じで打席付近に立って見上げていた。

ところが浜風に押されてか、これがフェアグラウンド方向に戻ってくる。結局、バウンドしてスタンドイン。エンタイトル・ツーベースだ。見上げる途中で「あっ!」という表情になった佐藤輝はダッシュ。ダメ押し打の喜びを示す前に二塁ベース上で胸を抑えて「あぶねー!」という具合に口を動かしていた。

この場面で“アレ”を思い出した虎党もいるのではないか。6月15日の楽天戦。同点の延長11回、佐藤輝はセンターへ大飛球を放った。しかし、これが柵越えせずにフェンス直撃。本塁打と見て、いわゆる“確信歩き”でスタートが遅れ、単打になった場面だ。阪神が今季唯一喫した7連敗中の出来事だった。

この日は途中まで歩きもしない“確信歩かず”だったかもしれない。だからこそ二塁ベースであんな表情を見せたのだろう。このコラムでは当時「試合展開的に佐藤輝を責める気にはならない」と書いたが、正直、この日も同じではある。あんなのもめずらしい。

「(ファウルだと?)そうですね。あんな打球、見たことなかったんで」。虎番記者に囲まれた佐藤輝はそんなことを言っていた。打球の舞い上がり方といい、ファウルゾーンから戻ってくる感じといい、長い間、甲子園での試合を見ているつもりだが記憶にない打球ではあった。

それでもあえて書けば、やはり油断大敵ということか。楽天戦では解説していた前監督・岡田彰布(オーナー付顧問)が「打ったら走る。当たり前のことやんか」と指摘していた。それが今回にも当てはまるかどうかは分からないが、やはり打ったら走るということなのだろう。最終盤で基本を確認する試合になったかもしれない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対巨人 7回裏阪神2死三塁、右越えに適時二塁打を放ち胸に手を当てる佐藤輝(撮影・藤尾明華)
阪神対巨人 7回裏阪神2死三塁、右越えに適時二塁打を放ち胸に手を当てる佐藤輝(撮影・藤尾明華)