春の九州大会決勝が久留米市野球場で行われ、九国大付が18季ぶり2回目の九州王者に輝いた。“下剋上”の優勝だ。九国大付は春の福岡大会で4位だったが、福岡開催の枠で出場が可能に。1戦ずつ力をつけ、準々決勝ではセンバツ8強の創成館にも打ち勝った。福岡高野連の野口敦弘理事長(56)は開催県の優勝に安どの笑みをうかべ「九国大付はもともと潜在能力があったが、決勝で本来の力が出ました。物足りなかった右打者に快音が出て、昨夏代表の明豊に大差で勝つことができました」。また、推薦枠で出場した東筑にも「準決勝で敗れましたが、同じく明豊に17安打を浴びせられた、センバツ出場校に恥じない打撃を見せてくれた」と県勢の健闘を称えた。

 今夏は第100回大会を記念して、福岡136校から初めて2校が甲子園に出場できる。このことが、福岡の高校球児にとって大きなモチベーションとなっていることは確かだ。南福岡と、北福岡。数はバランスよく、70校、66校に分かれたが、今年はどういうわけか北部に実力校が集中し、南部に少し元気がない。というのも、九州大会出場4枠をかけた春の県大会は、(上位から)小倉、八幡、東筑紫学園、九国大付と、すべてが北部のチームだったからだ。(優勝した小倉は不祥事のため、大会を辞退)

 このことについて、南部担当の江濱義博理事(55)は「昨春のセンバツで8強入りした福岡大大濠など、南部も頑張っているのですがね…」と首をかしげ「南部の実力が落ちているとは決して思わない。夏は南から全国で勝てる強いチームに出てきてほしい」と期待を口にした。筑陽学園、東福岡、福岡大大濠、春日、福岡、久留米商、福工大城東、西日本短大付、九産大九州、九産大九産など注目校の奮起が待たれる福岡。野球熱が高い土地だけに、ファンも同じ気持ちに違いない。

13-0の圧勝で九州王者に輝いた九国大付の選手たち
13-0の圧勝で九州王者に輝いた九国大付の選手たち

■九州から日本一へ!

 九州大会の開幕前夜。出場校の監督、部長約100人が一同に会する懇親会が開かれた。そこには福岡県内の私立、公立の若き指導者も同席し、活発な情報交換が行われたという。

県内にいる時は闘志むき出しで戦う監督たちも、グラウンドを離れれば尊敬しあう盟友となる。日ごろの悩みや葛藤を吐露できる懇親会になったそうだ。

 会の中で、鹿児島実の名誉監督で96年センバツ優勝監督でもある久保克之氏(80)から「九州からもう一度日本一のチームを出そう!」の呼びかけがあった。九州勢の日本一は、近年では佐賀北(07年夏)、清峰(09年春)、興南(10年春夏)など。福岡県となると、92年夏の西日本短大付までさかのぼらなければいけない。野口理事長は「九州には沖縄水産の栽監督や、鹿児島実の久保監督、樟南の枦山監督など、甲子園常連だった名将がたくさんおられましたが、いま九州で誰もが『この監督だ!』と言える方は興南の我喜屋監督くらいでしょうか。福岡も同じで、高校野球の指導者も大きな代替わりの時期に来ていると思います」。

 かつて福岡で強さを見せていた柳川の末次秀樹監督(60)が真颯館に、福工大城東の杉山繁俊監督(61)が東海大福岡(元東海大五)にと、南部から北部に指導の場を移す監督がいることも福岡の特徴。また、昨年6月には村田修一(元横浜、栃木ゴールデンブレーブス)、吉村裕基(ソフトバンク)らを輩出した東福岡の葛谷修氏(60)が教え子の下野輝章監督(34)へバトンを渡すなど、まさに「代替わり」の時となっている。福岡開催で盛り上がった九州大会。復権を願う関係者の思いと、期待を改めて知ることができた大会となった。【樫本ゆき】

福岡開催の九州大会開会式で、談笑をまじえて整列する九州の高校野球監督たち
福岡開催の九州大会開会式で、談笑をまじえて整列する九州の高校野球監督たち