学生野球の神様が味方!? 「学生野球の父」と呼ばれる飛田穂洲(元早大監督)をOBに持つ水戸一(茨城)が、同氏の没後50周年の節目に、昨夏8強の牛久を破った。1点を追う3回に海老沢広平捕手(3年)が同点スクイズを決め、5回に連打で勝ち越し。投げては2年生エース市村悠大投手が9回2失点と粘り、飛田穂洲が生んだ「一球入魂」の教えを実践。

 ここ一番で全神経を集中させた。1点を追う3回1死二、三塁。4番海老沢がバットを寝かせて、外の直球に食らいついた。打球は一塁方向に転がり、三塁走者が生還。ほとんど出たことがないサインだったが「転がった瞬間、いけると思った」と一発で仕留めた。

 この同点が流れを呼び寄せた。5回、1死走者なしから3番菅谷亮太外野手(3年)が左前打で出塁すると、4番海老沢が緩い直球を捉えて左前適時打をマーク。続く5番水嶋啓仁外野手(3年)も、緩いカーブを逃さず、左越え適時二塁打とした。クリーンアップの3連打で2得点と集中力を発揮した。

 県内屈指の進学校で、事前の対策が実を結んだ。この10日間、牛久の投手陣を想定して「緩いボールを打つ練習をしてきた」と竹内達郎監督(41)。相手投手は低め中心の配球だったが、練習通りに対応できた。打順変更も功を奏した。今春の県大会後、菅谷を1番から3番、海老沢を7番から4番、水嶋を3番から5番に組み替え、はまった。

 今年はOBの飛田穂洲没後50周年にあたる。同氏の銅像は校内のグラウンドを見渡せる位置にあり、前を通る時は必ず一礼する。銅像の掃除担当は4人1組で毎朝7時半から行うことも伝統となっている。この日は竹内監督が試合前に銅像を磨いてゲンを担いだ。

 先人の教えを実践した野球で初戦突破、2回戦は下館一と対戦する。2打点の海老沢は「伝統校として、先輩方と肩を並べられるように1戦1戦頑張りたい」と力を込めた。【青木沙耶香】

 ◆飛田穂洲(とびた・すいしゅう)1886年(明19)12月1日、茨城県生まれ。水戸中(現水戸一)-早大を経て、早大野球部の初代専任コーチとして黄金時代を築いた。野球を通じた人格形成や精神修養を重んじ「学生野球の父」と呼ばれる。「一球入魂」という名文句を残した。60年に野球殿堂入り。65年に78歳で亡くなった。