多良木が強豪熊本工に競り勝ち、1988年(昭63)以来、27年ぶりのベスト8に駒を進めた。熊本工監督時代に甲子園出場経験がある斎藤健二郎監督(66)が「名前負けするな」と鼓舞して迎えた一戦。5回まで2点ビハインドにも動じなかった。「何かやってくれると信じていた」という指揮官の思いにナインが応えた。

 6回1死から連打でつくったチャンスにスクイズと中前適時打で追いつくと一気に勢いがついた。2-2で迎えた9回1死、岩本浩朗外野手(2年)の公式戦2本目となる左越えソロ本塁打で勝ち越した。打った瞬間、一塁側スタンドの大声援に気を取られ、一塁ベースを踏み忘れ、戻って踏み直したほど。「頭が真っ白だった」。劇的な展開にベンチもお祭り騒ぎで泣く選手もいた。

 同校は将来的な統廃合による高校再編の対象で、単独チームでの甲子園出場は悲願。エース北崎裕之(3年)は「甲子園に行ったら(高校が)なくならない思いでやっています」と思いを代弁する。2台のバスで応援に駆けつけた多良木町民のためにも負けられなかった。【菊川光一】