小さなエースによる初完封劇で、浜松北が御殿場を撃破した。身長158センチを自称する鈴木駿麻投手(2年)が緩急を駆使した粘りの投球で相手打線を無失点に抑え、自身公式戦初の完封勝利。4月に赴任した増井裕哉監督(26)に公式戦勝利をプレゼントした。

 小さな体が草薙球場のマウンドで躍動した。浜松北の鈴木駿は「自分は県内で一番小さい。オレをなめてくれ」と胸中で叫びながら反骨心を燃やして投げた。選手登録の身長は163センチだが、実は158センチという小柄な肉体にあふれるパワーを右腕に集めた。120キロ台の直球と90キロ台のカーブで緩急をつけた粘りの投球で被安打4、無失点に抑えた。

 自身初となる公式戦初完封に2年生エースは「気合で、気持ちで抑えました」と喜びでほおを紅潮させた。父俊夫さん(47)は浜松商野球部で甲子園出場の経験を持つ。父から「制球力は走り込んだ分だけ上がる」と助言され、タイヤを引っ張りながらの約150メートルのインターバル走を連日30本ほど消化。「下半身が強くなり、制球が安定した。今日は自分の1番の投球かも」。春の常葉学園菊川戦で先発し、逆転勝利に貢献したエースは、さらに力強くなっていた。

 浜松北に赴任後、初の公式戦勝利を鈴木駿から贈られた増井監督は「駿麻サマサマですね」と感謝しきりだった。プロ野球日本ハム投手の長兄浩俊、03年に静岡の投手として甲子園に出た次兄達哉氏(静岡大成副部長)という増井3兄弟の末弟。自らも06年に静岡商主将として甲子園出場を経験した若き監督にとっても、幸先の良い好発進となった。【藤中栄二】

 ◆増井3兄弟 長兄の浩俊(31)は静岡から駒大、東芝を経て日本ハム入り。現在は日本ハムの守護神だ。次兄の達哉(28)は静岡から日本通運でプレー。引退後は母校の静岡で投手コーチを務め、現在は静清の副部長を務める。裕哉(26)は静岡商から静岡大に進学。今春、伊東商監督から浜松北へ移った。達哉は03年夏に、裕哉は06年夏にそれぞれ甲子園に出場している。(敬称略)